「初診日について~ここが肝心!🙋~」
前回は、「障害の程度要件について(線維筋痛症)~ここが肝心🙋~」について、お話ししました。😄
今回は、「初診日について~ここが肝心!🙋~」について、お話しします。🙇
障害年金の申請で、まず一番最初に行うのはこの「初診日の確認」です。
この「初診日が確定」しなければ、他の要件を検討することさえできません。
「初診日が変われば全ての要件が変わってしまう」からです。
目 次
※ご覧になりたい項目をクリック!🙋
- 1.初診日要件の大切さ
- ①初診日の取り扱いについて(特例を含む)
- ②健康診断について
- ③原則的な初診日の証明の仕方
- ④初診日の証明書類「受診状況等証明書」
- ⑤初診日の受診状況等証明書が取れない場合
- ⑥カルテは廃棄されているが、受診日などの記録は残っている場合
- ⑦初診の病院で、初診日が証明できない場合
- ⑧2番目以降に受診した医療機関による資料
- ⑨相当因果関係について
- ⑩障害年金において相当因果関係が認められることが多い例示
- ⑪相当因果関係なしとして取り扱われることが多い例示
- ⑫どの医療機関にも、初診日についての記載が残っていない場合
- ⑬第三者証明による初診日の証明
- 2.『社会的治癒』について
- ①再発と継続
- ②社会的治癒
- 3.『初診日要件の緩和』措置について
- ①初診日が特定できない場合の取扱い(一定期間要件)
- ②一定期間の確認のため参考とされる資料の例
- ③20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求で、障害認定日が20歳以前であることを確認できた場合
- ④日付が特定できない初診日の取扱い
- 4.上記「2.」及び「3.」のような取り扱いを実施するために、年金制度の改正が実施される背景について
- ☆知的障害について
1.初診日要件について
では、まず「初診日要件」について、ご説明いたします。
初診日要件として、次のように定義されています。
「疾病にかかり、または負傷し、かつその疾病または及びこれらに起因する疾病について、初めて医師又は歯科医師の診療を受けた日」
上記が初診日の定義であり、初診日が変わってしまうと、前回お話しした3つの他の大事な要件もみんな変わってしまうことがあります。😰
「1.加入要件」については、初診日に加入していた年金制度が変わってきてしまうこともあるんです。
この場合、年金制度が国民年金なら障害基礎年金、厚生年金なら障害厚生年金+障害基礎年金というように障害年金の額も変わってきます。
「2.保険料納付要件」については、受給資格を得られないこともあります。
「3.障害の程度要件」については、もしも障害等級が3級だとすると、加入していた保険制度が国民年金だった場合、障害基礎年金は2級しかありませんから、障害年金をもらえなくなります。
※厚生年金の場合は、2級の下に3級と障害手当金があります。
ですから、初診日がどこになるのかについて、まず、ハッキリさせる必要があります。
ただ、そのためには、最初に診断を受けた医療機関から「受診状況等証明書」によって初診日を証明してもらう必要があります。
受診した病院が1つしかない、また他の病院にかかっていたとしても、それがまだ最近だったのであればスムーズに進められることが多いです。
ただ、問題となるのは、何度も転院している場合や、その診断の日から5年以上もなる場合、あるいは病院が廃業した場合等の場合です。
また、証明を受けるためにはカルテの存在が必要ですが、カルテの保存期間は5年となっており、5年以上も前になるとすでに廃棄処分されている可能性があります。
もし、廃業されている場合にはカルテの保管場所を探さなければなりません。
さらには、病院の先生の場合によっては、「余所の病院の患者なのにどうして自分が書かないといけないのか」と応じてもらえないときもあるようです。
カルテが残っていないときには、上記以外の方法もありますが、とても大変です。
もしかすると、このことにより認定されることも難しくなってしまうこともあるかもしれません。
そして、初診日を証明することができないときには、認定の申請書の受付さえしてもらえなくなってしまいます。
このように、初診日要件は大変重要なのです。
※「医師等」とは、「医師と歯科医師」のみ。
①初診日の取り扱いについて(特例を含む)
①初めて診療を受けた日(治療行為または療養に関する指示があった日)
②同一の傷病で転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日
③過去の傷病が治癒し同一傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師等の診療を受けた日
④傷病名が確定しておらず、対象傷病と異なる傷病名であっても、同一傷病と判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日
⑤じん肺症(じん肺結核を含む。)については、じん肺と診断された日
⑥障害の原因となった傷病の前に相当因果関係があると認められる傷病があるときは、最初の傷病の初診日が対象傷病の初診日
⑦先天性の知的障害(精神遅滞)は出生日
⑧先天性心疾患、網膜色素変性症などは、具体的な症状が出現し、初めて診療を受けた日
⑨先天性股関節脱臼は、完全脱臼したまま生育した場合は出生日が初診日、青年期以降になって変形性股関節症が発症した場合は、発症後に初めて診療を受けた日
②健康診断について
「健康診断を受けた日」については、「原則として初診日とは扱われません」。
「健康診断を受けた後に、医療機関を初めて受診した日」が初診日にあたります。
ただし、「例外」として以下のような場合には、「健康診断の日が初診日と認められること」があります。
・初診時の医師の証明が添付できない場合で、医学的見地からただちに治療が必要と認められる健診結果である場合。
このような場合に、健診日を証明する資料(人間ドックの結果など)を提出した上で、ご自身で健診日を初診日とするように申し立てることができます。
③原則的な初診日の証明の仕方
初診日の証明は初診の医療機関で「受診状況等証明書」に記入をしてもらい、請求時に添付することとされています。
④初診日の証明書類「受診状況等証明書」
診断書を作成してもらう医療機関と、初診の医療機関が異なる場合には、初診日を証明するために、受診状況等証明書という書類を障害年金請求時に添付する必要があります。
一方、初診の病院で診断書を作成してもらう場合には、受診状況等証明書は必要ありません。
⑤初診日の受診状況等証明書が取れない場合
医療機関の「カルテの保存期間は5年」とされています
そのため、初診日がかなり前にある場合は、すでにカルテが廃棄されている場合やすでに閉院していることが多くあります。
記録がとれず、受診状況等証明書を提出できない場合は、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成します。
そして2番目に受診した医療機関に、「最初の受診医療機関の名称や初診日が記入された医師等の証明がないか」を確認します。
ある場合には、「受診状況等証明書を記入」していただき、「前医に関する医師等の証明も添付」して提出します。
2番目の医療機関にも記録がない場合には、さらに「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成し、次に受けた医療機関をあたる必要があります。
この作業を、一番最初の医師等の証明が添付できるまで繰り返す必要があります。
⑥カルテは廃棄されているが、受診日などの記録は残っている場合
カルテはなくても、受診者の氏名や受診日などの記録が残っている場合があります。
その場合は、その記録から「わかる範囲で受診状況等証明書に記入」していただくことで、初診日の証明として有効となる場合があります。
受診状況等証明書は「診療録」「受診受付簿、入院記録」「その他(内容を記入)」「本人の申し立て(いつの申立てかを記入)」のうち、 「何をもとに記入したかを選択する欄」があります。
「残っている記録からわかる部分のみ記入」していただき、「他の資料とあわせて提出」することにより、初診日認定をされることがあります。
⑦初診の病院で、初診日が証明できない場合
初診日から年月が経っている場合には、「初診の病院でカルテが破棄」されていて、あるいは、「病院そのものがすでに廃業」されていて、受診状況等証明書が作成できないといったケースがあります。(カルテの保存期間は5年)
こうした場合にも障害年金請求をあきらめることなく、講じられる手段がありますので、ご紹介します。
具体的には「受診状況等証明書が添付できない申立書」をご自身で作成する必要があります。
「受診状況等証明書が添付できない申立書」とは、「本人の記憶や手元に残っている手がかりとなる資料などをもとに、初診日を申立てていく書類」です。
しかし、医療機関が作成する「受診状況等証明書」と比べ、ご自身で作成する「受診状況等証明書が添付できない申立書」では、信ぴょう性が低くなってしまいます。
「初診日を特定する客観的な根拠となる資料を一緒に添付する」ことで、受診状況等証明書が添付できない申立書の内容に対する「信ぴょう性を補強する必要」があります。
ところで、この「参考資料として利用できる書類」には、次のようなものがあります。
1.身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳
2.身体障害者手帳等の申請時の診断書
3.生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
4.交通事故証明書
5.労災の事故証明書
6.事業所の健康診断の記録
7.健康保険の給付記録
8.病院紹介状
9.電子カルテ等の記録
10.お薬手帳、糖尿病手帳、領収書、診察券
11.第三者証明
11.その他(緊急搬送の証明書、家計簿等)
以上のような「参考資料」と「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出することにより、受診状況証明書がなくとも初診日として認められることがあります。
また、「初診日の年月までは参考資料で特定できる」けれども、「日付のみが特定できない」といった場合には、「月の末日が初診日」として取り扱われることがあります。
⑧2番目以降に受診した医療機関による資料
「2番目以降に受診した医療機関によって、初診医療機関やその初診日が記入された医師等の証明などの資料」は、次の取扱いになることとされています。
1.「請求の5年以上前に医療機関が作成した資料(診療録等)」に「本人申立ての初診日が記載」されており、それをもとに作成された資料の場合は、その「資料単独で初診日の認定」が可能。
2.医療機関による資料の作成が、「請求の5年以上前ではないが相当程度前である」場合については、「他の参考資料があわせて提出」された場合には、初診日を認めても差し支えない。
3.ただし、上記2の場合、「他の参考資料」としては「第三者証明は不適当」であり、「お薬手帳、領収書、診察券など本人申立て以外の記録を根拠として初診日について推定することが可能となる資料」が必要。
⑨相当因果関係について
相当因果関係とは、「前の傷病がなければ、後の疾病は起こらなかったであろうと認められる関係性」のことを指します。
障害の原因となった傷病の前に、相当因果関係が認められる別の傷病を発症している場合には、「前後の傷病を同一のもの」として取扱います。
そのため、相当因果関係の認められる傷病のうち、「前の傷病で初めて医師等を受診した日が初診日」にあたります。
⑩障害年金において相当因果関係が認められることが多い例示
①糖尿病と、糖尿病性網膜症又は糖尿病性腎症、糖尿病性壊疽(糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉鎖症)
②糸球体腎炎(ネフローゼを含む)多発性のう胞腎、慢性腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたもの(両者の期間が長いものであっても)
③肝炎と肝硬変
④結核の化学療法による副作用として聴力障害を生じた場合
⑤手術等による輸血により肝炎を併発した場合
⑥ステロイドの投薬による副作用で大腿骨頭無腐性壊死が生じたことが明らかな場合
⑦事故又は脳血管疾患による精神障害がある場合
⑧肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたもの(肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いもので合っても)
⑨転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたもの
⑪相当因果関係なしとして取り扱われることが多い例示
①高血圧と脳出血又は脳梗塞
②近視と黄斑部変性、網膜剥離又は視神経萎縮
③糖尿病と脳出血又は脳梗塞
※注意
「高血圧と脳出血・脳梗塞」は「医学的には因果関係がある」とされています。
しかし、「障害年金の観点では相当因果関係がない」ことになっているため、注意が必要です。
⑫どの医療機関にも、初診日についての記載が残っていない場合
上記の場合は、次の方法で初診日の証明をしていきます。
☆「初診日認定の際に参考とすることができる資料」
初診日を確認する上で、「参考資料として取り扱うこととされている資料」には、次のようなものがあります。
これらの写しを「受診状況等証明書が添付できない申立書」とあわせて、「可能な限り提出する」ことで、初診日の認定を求めます。
〈例〉
1.交通事故証明書
2.労災の事故証明書
3.事業所の健康診断の記録
4.身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳
5.身体障害者手帳等の申請時の診断書
6.生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
7.健康保険の給付記録
8.労災の証明書
9.電子力ルテ等の記録(氏名、日付、傷病名、診療科等が確認されたもの)
10.お薬手帳、糖尿病手帳、領収書、診察券(可能な限り診察日や診療科がわかるもの)
11.インフオームド・コンセントによる医療情報サマリー
12.第三者証明
13.その他(救急搬送の証明書、家計簿、手帳や日記、通知表の生活記録など)
⑬第三者証明による初診日の証明
第三者証明とは
「第三者証明」は、「医療機関で診療を受けていたことについて第三者が申し立てることにより証明したもの」
とされています。
第三者証明では「20歳前に初診日がある場合」と「20歳以降に初診日がある場合」で取扱いが異なります。
1.「20歳前に初診日」がある場合
「初診日を証明する書類が第三者証明のみの場合であっても、第三者証明の内容を総合的に勘案して、請求者申立ての初診日を認めることができる」とされています。
第三者証明は、請求者の初診日頃または20歳前の時期の受診状況について、基本的に次のいずれかに該当する場合に申し立てるものであることが必要です。
ア.直接的に見て認識していた。
イ.請求者や請求者の家族等から、「請求者の初診日頃または20歳前の時期」に聞いていた。
ウ.請求者や請求者の家族等から、「請求時から概ね5年以上前」に聞いていた。
2.「20歳以降に初診日」がある場合
「第三者証明とともに、初診日について参考となる他の資料の提出を求め、両資料の整合性等を確認の上、請求者が申し出た初診日を認めることができる」とされています。
第三者証明は、請求者の初診日頃の受診状況について、基本的に次のいずれかに該当する場合に申し立てるものであることが必要です。
ア.直接的に見て認識していた。
イ.請求者や請求者の家族等から、「請求者の初診日頃」に聞いていた。
ウ.請求者や請求者の家族等から、「請求時から概ね5年以上前」に聞いていた。
※その他の第三者証明の留意点
1.「医療従事者による第三者証明」 ➡他に参考資料がなくても、「その証明のみ」
2.「原則として複数の第三者証明があることが必要」
➡「可能な限り参考となる資料を提出する」
➡「第三者証明の信憑性を高める必要あり」
2.『社会的治癒』について
ところで、次はこれまでとは反対に、初診日のことについて、これから障害年金を申請される方にとってプラスになる制度の運用がなされているところがあります。
その一つが「社会的治癒」ということです。
・・・・・・・・・・・・・
男性Aさんはうつ病によって障害基礎年金をもらっていました。
そのうち、療養を続けるうちに調子がだいぶ良くなってきて、また働くことになりました。
ただ、まだまだ完全に治ったわけではありませんので、お医者さんのところには通わなければなりませんでした。
治療を続けながら働くこと5年以上にもなりました。
その間、最初はパートで働いていましたが、本当に調子が良くなったので主治医に相談し、Aさんはまた常勤で働くことになりました。
このとき、正社員となったことで厚生年金に加入しました。
そして、障害年金の次の更新時期がやってきて、Aさんは障害等級が3級に。
障害基礎年金は2級までしかないので、もうもらうことができません。
でも、元気になったAさんは、お給料も他の同僚と同じく会社の規定通りにもらえて、毎日頑張って働いていました。
ところが、Aさん。
職場の中で仕事の配置転換があり、新しい部署へ配属になりました。
以前の部署はパートから入ったこともあって、上司や同僚たちもAさんを気遣ってくれていたので、常勤になってもAさんにとっては大変居心地の良い職場でした。
が、次の職場はそのような配慮はなく、代わりに会社の中ではより重要な部署であったのです。
いわゆる「ご栄転」、「抜擢」だったのですが、この環境の変化にまだうつ病が治りきってないAさんは、またうつ病を悪化させてしまい、会社を辞めざるを得なくなってしまいました。
・・・・・・・・・・・・・・・
このとき、Aさんは51歳で、もう障害基礎年金は既にもらってはいません。
が、そのもらうことができる権利、受給権はまだ消滅してないのです。
障害等級に該当しなくなって3年経つこと、及び65歳を超えること、この両方が満たされない場合、受給権はそのまま残ることになっています。
悪化したということで、またそういう手続きをすれば障害基礎年金をもらうことが可能です。
ただ、このとき、Aさんは相変わらず通院はしていますが、周囲の同僚と同じように働き、それに見合うお給料ももらっています。
世間ではこういうことを「寛解」と言われたりしています。
『病気の治療は続けているけど、もうみんなと同じように働いて自活できている状態。』
医療の世界ではまだ治ったとは言えないとしても、障害年金の世界ではこのような状態を「社会的治癒」という言葉で呼ぶことがあります。
「社会的治癒」は、障害認定を受けてみないとわかりませんが、認められたなら「Aさんは既に治っていた」ことになるのです。
ここまでお聞きになって、「いったい何が言いたいのか?」と思われる方も多いと思います。
ここで少し考えてみますと、「前の病気が治っていた」ということは、今度のいわゆる「再発」、(このAさんは治ってないけど)、の場合は『これまでの「うつ病」とは「全く別の病気」』ということになるわけです。
そして、また新たに初診日のことからまた始めなければなりません。
が、このときはAさんは「初診日に厚生年金に加入」していることで、今回の認定では「以前の障害基礎年金ではなく、障害厚生年金の申請をすることが可能」となります!
もしも、こうしたことで新たに申請をし直して障害認定が下りると、Aさんは以前の障害基礎年金の月額68,000円からではなく、今度は最低でも月額約110,000円の『障害基礎年金+障害厚生年金』をもらうことができるのです。
ただし、もちろん、このことを申請して障害認定されてからのお話しですが。
もしも、このとき、普通にただ「悪化した」という手続きをしたとすれば、Aさんがもらえるのは「障害基礎年金月額68,000円」、そのままとなってしまいます。
もちろん、社会的治癒が認められるように、書類を集めて整理して申請することが必要です。
大変な場合もあります。
また、申請すれば認められると決まったものでもありません。
でも、やらなければそのままです。
このようなことをいち早く察して、申請される方にお伝えしてサポートするために、私たち障害年金専門の社労士は存在するのだと、私はいつも思っています。
当事務所では、新規申請の場合、初回無料相談を実施いております。
①再発と継続
「過去の傷病と同一の傷病を発症」した場合、「再発なのか継続なのか」、または「社会的治癒が認められるのか」によって、初診日が異なります。
a.再発
「過去の傷病が治癒したあとに、再び同じ傷病が発症」したケースを再発と呼びます。
再発した場合には「過去の傷病とは別の傷病」として扱われ、「再発してからはじめて医師等を受診した日が初診日」となります。
b.継続
「過去の傷病が治癒したと認められない」場合は、「傷病が継続しているもの」として扱われます。
例えば、「ご自身の判断で受診を中止した」場合には、「傷病は継続しているもの」と考えられることがあります。
その後、「症状が悪化して再受診をした日については初診日とみなされず」、「当該傷病で最初に受診した日が初診日」に指定されます。
②社会的治癒
社会的治癒とは、「医学的にみて過去の傷病が治癒していなくても、症状が安定していて、長期的に自覚症状や他覚症状に異常がなく、普通に生活や就労ができている期間が一定期間あるような状態」です。
社会的治癒に該当する場合には、文字通りに「治癒した」とみなされ、「再び悪化するなどして社会的治癒期間の後に、医師等の診療を最初に受けた日が初診日」として扱われます。
社会的治癒に該当するかどうかは、「診断書や病歴・就労状況等申立書など障害年金請求の際に必要となる書類の内容によって個別に判断」されます。
社会的治癒を証明するために「カルテ開示」をしたり、「会社や友人・知人の証言書を任意提出」したりするといったケースもあります。
3.『初診日要件の緩和』措置について
なお、初診日に関して、平成31年2月より一部取り扱いが緩和されました。
20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求について、2番目以降の医療機関の受診日から
『①20歳前の受信が確認できて、
かつ、
②その受診日以前に厚生年金の期間がない場合』
には、初診日証明手続きが簡素化できることとなっています。
例として、
(1)2番目以降に受診した医療機関の受診日から、障害認定日が20歳到達日以前であることが確認できる場合
➡2番目以降に受診した医療機関の受診日が、18歳6ヶ月前であること
(2)2番目以降に受診した医療機関の受診日が、18歳6ヶ月~20歳到達日以降にあって、20歳に到達する前に病気やけがが治った(症状が固定した)場合
➡治った(症状が固定した)場合は、症状が固定した場合が障害認定日になるので、2番目以降の受診日が18歳6ヶ月移行であっても構いません。
このことについて、年金機構では次のような具体的な事例をあげています。
(1)の場合としては、
①のケースの例では、
・10歳でA病院を受診
・18歳でB病院を受診(→1年6ヶ月後は19歳6ヶ月)
・20歳到達日前にC病院を受診
・その後、障害年金を請求
この場合、
『B病院で「受診状況等証明書」をもらい、18歳から受診していることが確認できる場合、A病院での書類の交付手続きは省略することができる』
ことになります。
また、同じ(1)の場合でも、
②のケースの例では、
・5歳でA病院を受診
・10歳でB病院を受診
・18歳6ヶ月でC病院を受診
・19歳でD病院を受診
・続いてE病院を受診して20歳到達日を迎えた
・24歳にて障害年金を請求
この場合には、
『C病院で「受診状況等証明書」が添付すれば、障害認定日は20歳到達日以前であることが証明できることから、A病院、B病院ではいずれも書類の交付手続きを省略することができる』
ことになります。
続いて、(2)の場合としてですが。
次のケースの場合、
・19歳でA病院を受診
・19歳5ヶ月でB病院を受診
・B病院に受診中の19歳7ヶ月目で症状が固定(→障害認定日)
・20歳到達日前にC病院を受診して20歳到達日を迎えた
・30歳にて障害年金を請求
上記の例の場合、
『B病院の「受診状況等証明書」があれば良いため、A病院では交付手続きは何ら不要』
となります。
このように、
『通常であれば、A病院で初診日を証明する「受診状況等証明書」をもらわなければならない』
のですが、このような場合、
『20歳到達日前に障害認定日があるのであれば、障害認定日またはその直前の病院の「受診状況等証明書」があればそれよりも前の、一番最初のものは不要』
ということになるわけです。
①初診日が特定できない場合の取扱い(一定期間要件)
具体的な初診日が特定できなくても、「参考資料により一定の期間内に初診日があると確認できる」場合で、本人申立ての初診日が認められることがあります。
1.同ー制度に継続的に加入していた場合
「初診日があると確認できる一定の期間」が「すべて同一年金制度の加入期間」となっており、その「どの時点においても保険料納付要件を満たしている」場合、
➡「本人申立ての初診日を認めることができる」
2.異なる制度に継続的に加入していた場合
「初診日があると確認できる一定の期間」が「全て国民年金の加入期間と厚生年金保険の加入期間」であるなど、「異なる公的年金制度の加入期間」となっており、この「期間中のどの時点においても保険料納付要件を満たしている」場合
➡本人申立ての初診日について、「参考となる他の資料とあわせて」、初診日を認めることができる」
②一定期間の確認のため参考とされる資料の例
〈一定期間の始期に関する資料の一例〉
・請求傷病に関する異常所見がなく発病していないことが確認できる診断書等の資料(健康診断や、人問ドックの結果など)
・請求傷病の起因および当該起因の発生時期が明らかとなる資料
・医学的知見に基づいて一定の時期以前には請求傷病が発病していないことを証明する資料
〈一定期間の終期に関する資料の一例〉
・請求傷病により受診した事実を証明する資料(2番目以降の医療機関による受診状況等証明書など)
・請求傷病により公的サービスを受給した時期を明らかにする資料(障害者手帳の交付時期に関する資料など)
・20歳以降であって請求傷病により受診していた事実および時期を明らかにする第三者証明
③20歳前に初診日がある障害基礎年金の請求で、障害認定日が20歳以前であることを確認できた場合
「障害認定日が20歳に達した日以前」である場合、障害の程度を認定する時期は「すべて20歳」となります。
このため、「20歳以前に厚生年金期間がなく、2番目以降に受診した医療機関の受診した事実を証明する資料に記載された受診日」から、「障害認定日が20歳以前であることを確認できる」場合
➡「初診日の証明を追加で求めることなく、申し立てた初診日を認めることができる」
④日付が特定できない初診日の取扱い
資料により、「初診日のある年月までは特定できるものの、日付が特定できない」場合
➡「当該月の末日が初診日」
厚生労働省から、「初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合における障害年金の初診日証明書類の周知・広報の推進について」という通達が公表されており、「初診日証明の具体的取扱い」を周知・広報するためのパンフレット(下)が作成されています
☆当事務所では、上記の日本年金機構のサイトにあるパンフレットのうち、次の頁の内容をよく利用することがあります。

4.上記「2.」及び「3.」のような取り扱いを実施するために、年金制度の改正が実施される背景について
前述の「2.社会的治癒」及び「3.初診日要件の緩和」等の改正が行われると、確かに申請を行う者には有利と言えると思います。
が、このようなことが行われるのはとは、何なのでしょうか?
前述の「3.初診日要件の緩和」について、私は次のようなことが背景としてあると耳にしています。
1.知的障害や発達障害などのお子様をお持ちになるお母さんたちが、20歳前障害基礎年金を請求するのに、病院へ行って診断書(受診状況等証明書)をもらうことになる。
2.もしも、お子様が発達障害で幼い頃に初診日がある場合、後日、カルテが見当たらないことから、年金申請のための受診状況等証明書を取ることができないことがある。
3.さらに、生来の知的障害で普段は投薬等の治療が必要ないため、病院へ通院・受診していない場合、年金申請のために診断書が必要だからと病院を受診しても、「治療が必要ないから」と受診を断られることがある。また、このことから、初対面のお医者さんへ申し出ることが困難な場合もある。
など、以上のようなことから、対象となる子供を持つお母さんたちが、これから障害年金の申請をすることが困難とならないようにとの配慮から、このような取り扱いをされることとなったというお話しを耳にしました。
私も、病気をする前には、重度の知的障害の子供を持って社労士の私自身もまた、同じように障害を持つ子供の親の会のお世話をしていたこともありました。
そのような場合に、初めて行った病院では、「普段はうちの病院に受診していないのに」と、お医者さんに受診を断られたお母さんたちもおられました。
生来の知的障害児には、投薬との治療を受けなくても良い場合が多く、定期的に病院へ受診しないこもとまた多いです。
そうした国民の声を何らかの方法にて政策に反映させることにより、年金制度を国民の実態・実情に合わせたのだと、私は推察します。
☆知的障害について
1.先天性の知的障害のように生来の障害については、「出生日 = 初診日」です。
成人してから、病院を受診してはじめて知的障害と診断された場合であっても「出生日 = 初診日」という考え方に変わりはありません。
2.発達障害(アスペルガー症候群やADHD〈注意欠如・多動症〉など)については初診日の考え方が異なります。
a.「知的障害と発達障害の両方を発症」している場合 ➡「出生日が初診日」
b.「知的障害を伴わない発達障害」、「知的障害の程度が障害年金の受給に該当しないくらいに軽度」 ➡「医師を初めて受診した日が初診日」
3.上記1と2より、正しく初診日を特定するためにも、「発達障害で障害年金の申請」を行う際には、「知的障害を伴っているかどうか、医師に確認」しておく必要があります。
以上、「初診日について~ここが肝心!🙋」について、お話しました。🙇
それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋
なお、よろしければ次のブログもご覧になってください🙇
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