『就労と障害年金の関係~ノーマライゼーションの理念~』
前回は、「最近のご相談から~なかなか認定されない難病のこと~」について、お話ししました。😄
今日は、「就労と障害年金の関係~ノーマライゼーションの理念~」について、お話しします。🙇
「広島地裁での令和3年10月26日にあった判決」からです。
障害等級2級の双極性障害の患者が、「就労していること」を理由として、3級への級落ち処分となりました。
社会保険審査会は、「精神障害等級判定ガイドライン」を認定基準に比較し、数段低いものとして判断していることから、このような裁決をされました。
ところが、法廷では、職場でみられる問題行動とそのことから退職勧告を受けるなどし、度重なる欠勤遅刻がみれらること。
さらに、この患者が支援センターの援助により「障害者雇用で就労していたこと」を取り上げられ、『同ガイドラインの「総合評価の要素」で2級の可能性を検討すべきである』と判断。
同ガイドラインの「等級の目安」にある「就労状況」等の各項目に当てはめてみて、『「目安の等級」である2級としない理由はない』とし、結果、「3級への級落ち処分を取り消し」ました。
この判決により、この患者は就労しているが、障害等級2級であることを認められ、「形式上の就労を理由とした2級非該当とする処分を違法である」とされました。
現在も、「就労していると3級も無理かも!」とされ、例外的に「職場での配慮の内容」や「障害者雇用」「就労支援」等での場合に認められることがあるというのが、「障害年金と就労」の関係です。
不服申立の審査をしている社会保険審査会でも、これまでこのようにしていました。
ところが、法廷でこうした判決が出たことにより、『「障害年金=就労していないこと」ではない』との見解が示されたわけです。
しばらく前にここでもお話し、またそのことを事務所の機関誌「ライトハウス通信10月号」にも少し載せていますが、来年度以降、厚労省の年金部会の審議にて「働き方改革」のことから、「就労を前提とした障害年金のあり方」が検討されそうな雰囲気となっております。
私も度々、「働いているともらえないんですね?」と尋ねられて、いつも「ああなってこうなって・・・」とモゴモゴとお話する訳で、いつでも「こうなります!」とビシッと言えないことで、「なんだかなあ・・・」という気持ちでした。
県庁時代に精神保健福祉の業務に就いていた頃、確かに障害年金には「稼得保障」という目的もある。
けれど、それと同様に「障害者の社会参加を後押しするため」という、大きな役割があること。
また、所得税法上では障害年金を非課税とする意味は、この「社会参加を後押し」する意味からだと私は学びました。
心身にハンディキャップを抱える障害者が健常者と同様に、社会で活躍するためにはこうした配慮がなけらば自活することができないから、このような制度となっている。
かつて、私自身が重度知的障害児の親として知的障害児の親の会のお世話をしていたときに、「障害者が健常者とともに安心して暮らせる社会」ということで「ノーマライゼーション」という理念を私は学ばせていただきました。
あれから20年以上も経った現在、この仕事をすることになって私は、こうした理念が未だに浸透していないことに首を傾げるような気持ちです。
スペシャルオリンピックス、パラリンピックなどかつてはなかったようなイベントが世界でも催されている時代に、日本では「グローバル」と呼びかける政府の下で、「就労している=障害年金もらえない」という構図が大手を振っていること。
所得税法等と比較しても、いかがなものでしょうか?
「ある法律では〇〇だけども、ある法律では××だよ」ではなく、まずは全ての政策がスタートライン並ばなければ、「障害者雇用を」と法定雇用率を上げたりするなど新しい政策をやろうとしても、「未だにスタートラインにさえ経っていない制度」が存在することを変えていかないと、なかなか難しいものだと私は考えます。
みなさんはどう思われますか?
以上、「就労と障害年金の関係~ノーマライゼーションの理念~」について、お話しました。🙇
では、また木曜日にお会いしましょう!🙋
