よくある質問から

「障害年金と生活保護費の関係について~ここが肝心!🙋~」

前回は、保険料納付要件について~ここが肝心!🙋~について、お話ししました。😄

今回は、「障害年金と生活保護費の関係について~ここが肝心!🙋~」について、お話しします。🙇

当事務所では、「障害年金と生活保護費は両方もらえるのか?」とのご質問をよくいただきます。

実際のところ、障害年金が優先的に支給され、生活保護費は年金額を差し引いた差額のみが支給されます。

なお、1級と2級の障害年金の受給者には、生活保護費に障害者加算がつきます。

①生活保護と障害年金の関係

生活保護には「他方優先」という基本原理があります。

「他方優先」とは、「保護の補足性の原理」とも言われ、「他に利用しうる資産、能力などがあれば、まずはそれを優先的に活用し、それでも足りない部分を生活保護費によって補う」という考え方のことです。

例えば、貯金があるならそれを、仕事で収入を得られるなら仕事をしてください、といったことです。



この原理に従い、生活保護の対象にある人が障害年金も受給できる場合は、まずは障害年金を優先的に受給することになります。

そして、「障害年金を受給してもなお足りない部分がある」場合には、「原則として足りない部分」を生活保護費として支給されることになるのです。



障害年金の請求をしていない方に対しては、生活保護の担当者から「障害年金の請求をするように」と促される方も多いと思います。

それは、この「他方優先」があるからです。

生活保護の「他法優先」という考え方

生活保護法第4条2項
民法 (明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。


➡生活保護は、原則として、生活保護法以外のあらゆる制度を利用しても、それでも困窮する場合にしか受給することはできない

※生活保護費はまるまる税金だから、最終的な手段としてのみ認められることと、支給の基準が厳しくなっているのでしょうね。

②生活保護に障害年金が支給されても原則、総額は変わらない

では、生活保護を受けている方が障害年金を受けると、支給される額はどのように変わるでしょうか。



障害年金を受給すると、生活保護費は満額支給されなくなります。

「生活保護の額から障害年金の額を差し引いた差額のみ」が生活保護費として支給されます。

【生活保護の支給額】=【原則の生活保護の額】-【障害年金の額】



つまり、支給される総額は、原則の生活保護費と同額になります。

障害年金と生活保護費の両方を、一緒に満額ずつを受給できるのではありません。



そうなると、差し引かれて結局のところ、同じ額になるのなら、わざわざ障害年金を受給する意味はないと思われる方も、当然、多いかもしれません。

上述した「他方優先」という考え方があるので、必要性を感じない場合であっても、障害年金が受給できる可能性があるならば請求する必要があるのですが、障害年金の支給を受けることにはメリットもあります(後述参照)。

生活保護費として算定される額

障害年金の額
実際に支給される生活保護費

③生活保護に障害年金をプラスするメリット

a.障害年金の使い道は自由

生活保護費には様々な制約があります。



例えば、生活保護を受給すると、財産(土地・家屋・車等)の所有等に制限があります。

また、医療機関の受診先にも制限が存在します。

申請して認められれば希望する医療機関を受診することも可能ですが、申請の手間がかかります。



一方、障害年金にはこのような制限はありません。

b.障害年金は更新までは支給が継続

生活保護は、収入額が一定額を超えた場合には支給が打ち切りとなります。

一方の障害年金については、病状が落ち着いてきて仕事を始め収入が増えたとしても、次の更新の時期までは障害年金の支給が継続します。

※ ただし、20歳前傷病による障害基礎年金の場合には、収入額の増加を理由として年金支給が停止する場合があります。

c.障害者加算の要件になる

生活保護を受給している方に障害がある場合、生活保護に障害者加算が加算されます。

障害者加算の額は、障害の程度、および生活保護における地域の等級によって以下のようになります。

※ 級地区分はこちら。(厚生労働省のサイトへ)

☆(参考)生活保護の障害者加算の額(※地域によって異なります。)

令和6年10月1日現在

1級地2級地3級地入院患者
施設入所者
下記のいずれかに該当する障害のある者26,810円24,940円23,060円23,310円
・身体障害者障害程度等級表の1~2級
・国民年金法施行令別表の1級
下記のいずれかに該当する障害のある者17,870円16,620円15,380円14,870円
・身体障害者障害程度等級表の3級
・国民年金法施行令別表の2級

・身体障害者障害程度等級表の1~3級に該当する障害のある者=「身体障害者手帳1~3級」

・国民年金法施行令別表の1~2級に該当する障害のある者=「障害基礎年金1~2級」

※ 障害厚生年金3級は対象外です。



また、障害者加算については、必ずしも「該当する等級の手帳の所持や年金の受給」を求めるものではなく、「定められた程度の障害状態にあれば」障害者加算の対象になり得ます。

したがって、「必ずしも障害基礎年金(1~2級)を受給していることは要件ではありません」が、障害者加算の要件を満たしていることが明確になります。



なお、すでに障害者加算の加算になっている方が、後から障害年金を請求する際には、気をつけることがあります。(「⑤生活保護受給者が年金を請求するときに気をつけること」にて後述。)

④精神障害者手帳3級を持っているとき

精神障害者保健福祉手帳3級を所持している方は、これだけでは生活保護の障害者加算の要件を満たさないため、障害者加算がつきません。

なぜなら、国民年金法施行令別表の1~2級の障害状態にあるかどうかが分からないからです。



しかし、精神障害者保健福祉手帳3級を所持している方が、障害年金を請求した結果、障害基礎年金2級の支給が決定することがあります(結構あります)。

そうすると、障害者加算が加算されるようになり、その分だけ総額が増えることになります。(※ この場合、精神障害者保健福祉手帳の等級も2級に変更することができます。)

⑤生活保護受給者が障害年金を請求するときに気をつけるべきこと

a.障害者加算が取り消しとなる場合がある

上で、「必ずしも『該当する等級の手帳の所持や年金の受給』を求めるものではなく、定められた程度の障害状態にあれば障害者加算の対象になり得ます。」と説明しました。

これは、「手帳や年金の手続き中であっても、その結果を待つことなく、医師の診断等により障害者加算の適否を認定して良い」とされているからです。

これにより、「障害年金の支給決定よりも前から障害者加算が加算されている場合」があります。



先に障害者加算を受けられるのですから、本来であればありがたいことなのですが、事前に知っておくべきことがあります。

『障害者加算を先行して受けていた方について、後から「障害年金の1~2級に該当しない」との理由で障害年金の請求が棄却された場合』は、『その棄却の決定があった月の翌月から障害者加算等の認定を取り消す』こととされています。



つまり、障害基礎年金の支給が受けられないことが決定した場合には、『その決定時点に遡って障害者加算を返還』する(または、『その分が差し引かれた生活保護費が支給』される)ことになるのです。



先行して障害者加算を受けているが障害年金を請求する場合には、結果によっては、このような可能性があることを承知しておく必要があります。

b.支給のタイミングが異なる

生活保護費の支給は毎月1回です。

それぞれ1か月分が支給されます。



これに対して、障害年金の支給は2か月に1回です。

偶数月に前月までの2か月分がまとめて支給されることになります。

例えば、10月~11月の2か月分がまとめて12月15日に支給されます。



このように、支給のタイミングがずれるので、金銭管理が難しくなる場合があります。

支給された障害年金は2か月分であることを忘れずに、くれぐれも支給されても直ぐに全部を使うことのないよう、ご注意ください。

c.経費算入についての取り扱いが市町村によって異なる

障害年金の申請をされる際に、お調べいただきたいことは、『援護の実施者(生活保護の支払元)である市町村の経費算入』についてということです。

保護費は前払い、障害年金は後払いなので、通常は利用者の障害年金が決定すると、支給された障害年金は市町村に返還することになります。



が、一部の市町村では、『利用者が『社労士に支払う報酬を障害年金請求の必要経費』とみなし、利用者から市町村への返還金から控除する』ことを認めています。

つまり、『社労士への報酬にあたる部分は返還しなくても良い』ということになります。


・・・・・・・・・

※根拠法令は次のとおり。

(厚生労働省事務次官通達より)

第8 - 3 -(2)就労に伴う収入以外の収入

ア恩給、年金等の収入

(ア)恩給、年金、失業保険金その他の公の給付については、その実際の受給額を認定すること。

(イ)(ア)の収入を得るために必要な経費として、交通費、所得税、郵便料等を要する場合又は受給資格の証明のために必要とした費用がある場合は、その実際必要額を認定すること。

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必要経費と認めてくれる市町村で障害年金請求を検討している利用者の方は、社労士(法人)へ代行手続きを依頼しても実質的な自己負担がないので活用されることをお勧めします。

ですが、認めてくれない市町村の利用者の方は、よくご検討されることをお勧めいたします。

※経費算入についての取り扱いの方針は、各市町村の対応は様々です。(各市町村へお尋ねください。)

※生活保護の受給者で、実際に障害年金の申請を検討されている方へ

まずは市区町村にお問い合わせください。

生活保護受給中で障害年金を受給したいという方は、まずはお近くの市区町村にお問い合わせください。

『人生山あり谷あり』
~「生きていればいろいろあるさ」~
2024年10月7日