「障害年金と失業手当の関係について~ここが肝心!🙋~」
前回は、「障害年金と生活保護費の関係について~ここが肝心!🙋~」について、お話ししました。😄
今回は、「障害年金と失業手当の関係について~ここが肝心!🙋~」について、お話しします。🙇
当事務所では、「障害年金をもらいながら失業手当はもらえないのか?」とのご質問をいただくことがあります。
相談しても「障害年金2級もらいながら失業手当なんてもらえない」という社労士事務所も存在するようです。
実は、基本手当(失業手当)を受給するためには、求職活動をする必要があります。
もしかすると、その事務所の社労士は、「障害年金2級をもらう状態で求職活動ができないだろう」と考えたのかも知れません。
しかし、制度上、障害年金と雇用保険法の基本手当(失業手当)は併給することができます。
また、求職活動とは、必ずしも正社員でフルタイムで働く仕事を探すものに限りません。
労働時間や労働日数、仕事内容に一定程度の配慮をした仕事を探すことも求職活動にあたります。
障害年金2級を受給しながら、このような求職活動をされる方もいらっしゃいます。
もしも、求職活動が難しい場合には、受給期間の延長を申請することもできます。
求職活動ができるか否かは、医師とも相談の上、判断しなければなりません。
が、制度上、障害年金と雇用保険法の基本手当(失業手当)は併給することができることになります。
なお、よく勘違いされるのは、60歳代前半の老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)と雇用保険の基本手当との調整です。
この場合は一緒にもらうことができません。
①失業手当と障害年金
まずは、失業手当と障害年金がどのような場合に受給できるのか、確認していきます。
a.失業手当
退職後にハローワークへ行くと、失業している間、お金がもらえますが、これを「基本手当」といいます。
一般的には、失業手当、失業給付等、さまざまな呼び方をされております。
基本手当は、雇用保険から支給される「求職者給付」の一つです。
求職者給付には、基本手当の他に、高年齢求職者給付金、特例一時金、傷病手当、技能習得手当などがあります。
基本手当は、雇用保険の被保険者が退職(離職)した際に、「一定の条件を満たすと」受給することができる手当です。
働いていた頃の賃金の45%~80%に相当する額が、失業している期間の一定程度(原則は最大1年間のうちの所定の日数分が限度)支給されます。
支給要件は色々ありますが、次のような人を対象者として支給しています。
●失業手当の対象となり得る者
就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力がある。(意思と能力)
しかし、本人や支援者の努力によっても、職業に就くことができない失業の状態にある人のことをいいます。
単なる失業中の人のことをいうのではないことにご注意ください。
b.障害年金
障害年金は、国民年金および厚生年金保険の制度から支給される年金で、障害の程度によって1級から3級までの障害等級の規定があります。
障害等級は、「障害認定基準」によって審査され、日本年金機構により決定されます。
次に3級の例がありますのでご覧ください。
このように、障害等級3級は、「障害によって通常のような労働はできない状態」であることが必要です。
(例) 障害年金の対象者(3級の場合)
労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。
傷病が治らないものにあっては、労働が制限を受けるか、または労働に制限を加えることを必要とする程度のもの。
②失業手当と障害年金についての併給調整
社会保険の給付の中には、同一の原因に対しては複数の給付を重複して支給しないという、併給調整の仕組みを規定しているものがあります。
併給調整が規定されている給付については、複数の給付について支給要件を満たす場合でも、それぞれ全額を受給することはできません。
優先順位の最も高い給付を受けると、その他の給付については、支給額を一定割合で減額または全部を支給停止、あるいは差額のみを支給されることになります。
a.失業手当と障害年金には併給調整の仕組みはあるのか?
答えは、失業手当との障害年金については、併給調整の規定はありません。
このため、同時期に両方の支給要件に該当して支給を受けても、片方が減額されたり支給停止したりする必要はないということになります。
b.失業手当と障害年金の併給に問題はないのか?
前述のとおり、それぞれの支給要件に該当しているのであれば、失業手当と障害年金を併給することに問題はありません。
大事なことは、「それぞれの支給要件に該当しているのであれば」という箇所です。
特に、「支給要件のうち労働能力がどの程度あるのか」がとても重要になります。
③労働能力の程度
「労働能力の程度」はどのように考えれば良いのでしょうか?
a.失業手当における労働能力の程度とは
失業手当の対象者は「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても職業に就くことができない失業の状態にある人」ですから、「就職できる能力」を有することが必要です。
しかし、ここでいう就労は、フルタイム就労だけを指しているわけではありません。
雇用保険の被保険者となる要件の一つが週20時間以上の就労であることから、失業手当における就職できる能力についても、様々な理由でフルタイム就労は無理でも「週20時間以上の就労が可能な状態」であれば就職できる能力があるとみなされます。
b.障害年金における労働能力の程度とは
障害年金の対象者は、その等級によって様々ですが、障害年金の3級は「労働が制限を受ける状態」、障害年金の2級は「労働によって収入を得ることができない状態」とされています。
ただし、収入が少しでも得られるのならば障害等級に該当しないという訳ではありません。
「精神障害における等級判定ガイドライン」には、
「就労系障害福祉サービス及び障害者雇用制度による就労については1級または2級の可能性を検討する」
「一般企業での就労の場合は、月収の状況だけでなく就労の実態を総合的にみて判断する」
「就労の度や就労を継続するために受けている援助や配慮の状況も踏まえ、就労の実態が不安定な場合は、それを考慮する」
などと記載されています。
したがって、障害年金における労働能力は、仕事の内容や仕事場で受けている援助や配慮の内容などを踏まえて、「援助なしでは労働によって収入を得ることが難しい状態」も含んでいると考えることができます。
なお、障害の種類によっては、労働能力の程度とは無関係に障害等級が判定されるものもあります。
視力障害や視野障害、聴力障害、手足の障害などの外部障害は、障害の程度が数値化しやすく、その数値等によって障害認定基準が設けられています。
例えば、視力の良い方の眼の視力が0.07以下の場合は2級、両足の筋力が完全に消失して車いすを常時使用している場合は1級などとなり、これらの障害を有する人が通常労働者と同様に働いていても、それを理由に等級が下がることはありません。
また、人工透析をしている場合は2級、心臓に人工弁を装着している場合は3級など、内部障害の中にも明確な障害認定基準が設けられているものもあります。
このように、障害の種類によっては、障害認定基準に該当していれば労働能力は無関係に障害等級が判定されるものも障害年金の世界には存在します。
c.労働能力は医師が作成した書類によって判断される
それでは、労働能力の程度について、それぞれの審査機関(失業手当ならハローワーク、障害年金なら日本年金機構)はどのようにして判断するのでしょうか。
原則は、医師によって作成された書類をもとに判断されます。
具体的には、失業手当の方は「就労可否証明書」、障害年金の方は「診断書」の記載内容によります。
④労働能力の程度を判断する書類とは
a.就労可否証明書
失業手当を受給するには、前職場によって作成された離職票が必要です。
離職票には、直近の就労日数や賃金支払状況などの様々な情報が記載されていますが、この中に離職理由が記載されています。
離職理由が「職務に耐えられない体調不良、けが等があったため」などの身体的な理由の場合、求職の申し込みをする際に「就労可否証明書」の提出を求められます。(ハローワークによっては「就労可能証明書」「病状証明書」などの名称の場合もあります。)
または、離職後に疾病や負傷等の理由で失業手当の受給期間の延長を申請(受給期間延長申請書を提出)した場合にも、就労できない理由が止んで求職の申し込みをする際に「就労可否証明書」の提出を求められます。
つまり、 この証明書によって、本当に「就労ができるほどに体調やケガが回復した」のかどうかを確認するのです。
回復していないのならば、「就職しようとする意思と能力」 の能力部分が欠けるので、求職の申し込みはできないはず…というわけです。
b.就労可否証明書(例)障害年金の診断書
障害年金の診断書は傷病によって8種類の様式がありますが、そのいずれの様式にも「現症時の日常生活能力及び労働能力」を記載する欄が設けられており、この欄は必ず記入するよう赤字で注意書きが付されています。
この欄に、主治医から「労働能力」を記載してもらいます。
⑤障害年金診断書の「現症時の労働能力」記入欄 労働能力が等級判定に影響を与える場合もある
前述したように、障害の種類によっては、障害認定基準に該当していれば労働能力は無関係に障害等級が判定されるものもあります。
しかし、障害等級の判定において労働能力の程度が関係している場合は注意が必要です。
ほとんどの場合、就労可否証明書と診断書、いずれの書類も主治医に作成を依頼することになると思います。
医師は診療録(カルテ)を基に各書類を作成します。
就労可否証明書において「週20時間以上の就労は可能」と記載するのならば、障害年金の診断書も同様な内容となるはずです。
もちろん、障害年金における労働能力は、就労の時間数だけで判断されるものではありません。
雇用契約上の就労時間は週20時間であっても、その時間数を働くために職場から援助を受けていたり、業務内容が単純反復のものに限定されていたりなど、就労の状況も考慮に入れて総合的に労働能力を判断されます。
したがって、障害年金の診断書を医師に依頼する場合には、就労の状況を医師にしっかりと説明しておくことが非常に重要になります。
⑥支給要件に該当するなら申請を
障害年金を考えている方や、障害年金を受給中の方であっても、失業手当の支給要件に該当する場合はぜひ失業手当の支給申請をすべきです。
失業手当の支給要件に該当するということは、過去の一定期間、雇用保険に加入していたということです。
保険とは、困ったときに備えて加入するものです。
当然の権利なのですから、困っているときは堂々と受給して良いのです。
ただし、不正受給はいけません。
例えば、働く気持ちは一切ないのに失業手当欲しさに求職の申込みをするのは不正受給にあたります。(失業手当を受給するには、求職の申込をして熱心に就職活動することが支給要件になっています。)
あるいは、障害年金の方では「全く働けそうにありません」と主治医に伝えて診断書を作成してもらい、失業手当の方では「働くのに何の問題もありません」と言うことも不正受給にあたります。
それぞれの申請の際には、正直に事実を伝えて申請するようにお願いします。
以上、「障害年金と失業手当の関係について~ここが肝心!🙋~」について、お話しました。🙇
それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋
なお、よろしければ次のブログもご覧になってください🙇
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