『「児童扶養手当と障害年金の関係」について~ここが肝心!🙋~』
前回は、『「事後重症請求」について~ここが肝心!🙋~』について、お話ししました。😄
今回は、『「児童扶養手当と障害年金の関係」について~ここが肝心!🙋~』について、お話しします。🙇
障害基礎年金と児童扶養手当の関係性の原則
児童扶養手当の支給対象者が障害基礎年金も受給できる場合、両方を満額受給することはできません。
まず、障害基礎年金は優先して満額支給されます。
児童扶養手当との併給調整では、支給される障害基礎年金全額ではなく、「子の加算額」と児童扶養手当の支給額を比べます。
そして、児童扶養手当については、障害基礎年金の「子の加算額」と児童扶養手当を比較して差額がある(児童扶養手当の方が多い)場合のみ、児童扶養手当はその差額分だけが支給されます。
差額がなければ、児童扶養手当は全額が支給停止となり、何も支給されません。
①児童扶養手当の差額の算出方法が改正
a.令和3年3月より児童扶養手当の差額が支給
実は、以前までは、障害基礎年金を受給している人は、児童扶養手当の受給要件に該当していても、ほとんどの場合、児童扶養手当は支給されませんでした(全額が支給停止の状態)。
これは、「子の加算部分を含む障害基礎年金等の全体の月額」と「児童扶養手当」とを比較することになっていたからです。
この比較方法では、現実問題として児童扶養手当の方が高くなることはありえず、差額が0円だったのです。
この差額の算出方法が、令和3年3月から改正されることになりました。
改正後は、「障害基礎年金のうち子の加算部分の月額」と「児童扶養手当」とを比較することになりました。
これにより、児童扶養手当が「児童扶養手当の額が障害年金の子の加算部分の月額」を上回る場合 、その差額を児童扶養手当として受給できるようになりました。
(出典:ひとり親のご家庭の方へ、大切なお知らせ|厚生労働省)
なお、障害基礎年金以外の公的年金を受給している方は、この改正後も、公的年金の額が児童扶養手当額を下回る場合に限り、その差額分が児童扶養手当として支給されます。
※障害基礎年金以外の公的年金を受給しているとは、遺族年金、老齢年金、労災年金、遺族補償などの障害年金以外の公的年金や障害厚生年金(3級)のみを受給している場合です。
b.これまで
平成26年12月以降は、公的年金は全額支給されることに変わりはありませんが、児童扶養手当の月額が公的年金の月額より多い場合は、それらの差額が児童扶養手当として支給されるように改正されました。
ここで、注意していただきたい点は、児童扶養手当をすでに受給されている方が、障害認定日による障害年金請求する場合、すでに受け取った児童扶養手当を返還しなければならない可能性が出てくるということでした。
障害認定日による障害年金請求で認定されると、障害認定日の翌月から遡って障害年金が支給されます。
この間に受け取っていた児童扶養手当は、全額又は一部を返還することになりました。
②児童扶養手当と障害基礎年金
a.児童扶養手当とは
児童扶養手当とは、ひとり親家庭や、父母のいずれかに重度の障害がある子育て家庭などに支給される手当です。
児童扶養手当の支給には、児童に関する要件や、支給対象者に関する要件など、様々な要件があります
※児童手当と児童扶養手当の違いについて
児童手当は、中学校を卒業するまでの児童を養育している家庭が受け取れる手当です。
児童手当は、中学卒業までの児童を養育しているすべての親を対象としています。
一方で、児童扶養手当は「ひとり親」が支給対象です。
支給の要件を満たせば児童扶養手当と児童手当を同時に受給できるため、中学生以下の子がいるひとり親世帯では両方の手当を受給できるケースもあります。
いずれの手当も申請手続きをしないと受給できません。
※詳しくは、住所地の市町村へお問い合わせください。
※特別児童不要手当とは?
特別児童扶養手当は公的年金と調整されず全額が支給されます。
つまり、障害年金を受け取りながら、特別児童扶養手当も全額受け取ることができます。
特別児童扶養手当とは、中程度以上の知的・精神・身体障害のある子を家庭で養育している父母に支給される手当です。
児童扶養手当とは全く別のものになります。
b.障害基礎年金とは
障害年金は国が運営する年金保険で、けがや病気で仕事や生活に制限を受けるようになった際に一定の要件を満たすと年金として支給されます。
障害年金には、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類がありますが、「児童扶養手当との調整に関係するのは障害基礎年金」のみです。
「障害基礎年金」の受給には、下記の3つの要件を満たすことが必要です。
①初診日要件
・障害の原因となった病気やけがの初診日に国民年金か厚生年金に加入中である。
・20歳前または日本在住の60歳以上65歳未満の人で年金制度に加入していない。
②保険料納付要件
年金の保険料を一定期間以上納付していること。
※ 20歳前に初診日がある場合は納付要件は問われない。
③障害状態要件
障害認定日もしくは現在、障害の状態が障害等級表に定める1級または2級に該当していること。
※「子の加算額」は、障害基礎年金を受けている方に生計同一の子がいるときに加算
※「子」とは、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子
③児童扶養手当の対象となる児童
まずは、児童扶養手当の対象となる「児童」に関する要件です。
ここでいう「児童」とは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある児童、または一定程度の重度の障害を有する20歳未満までの児童で、以下のいずれかの要件を満たす子を指します。
☆児童扶養手当の児童に関する要件
①父母が婚姻を解消した児童
②父または母が死亡した児童
③父または母が重度の障害の状態にある児童
④父または母の生死が明らかでない児童
⑤父または母から引き続き1年以上遺棄されている児童
⑥父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた児童
⑦父または母が法令により引き続き1年以上拘禁されている児童
⑧母が婚姻によらないで懐胎した児童
⑨父・母ともに不明である児童(孤児など)
①~②、④~⑧は、主にひとり親家庭(母子家庭、父子家庭)を指します。
⑨は、両親ともに不明で父母以外(祖父母など)が児童を育てている家庭を指します。
③は、父母のどちらかに重度の障害がある家庭のことを指し、この場合のみ両親がいる家庭も含むことになります。
※「重度の障害」とは、「児童を監護する父母のどちらかが障害基礎年金1級程度の障害の状態」であること。この場合、両親がいる家庭でも「ひとり親」とみなさることに注意!
父または母の「重度の障害の状態」とは
障害年金における障害認定基準と比較すると障害基礎年金の1級と同等の基準になっています。
身体障害者手帳の基準と比較すると、身体障害者手帳の2級と同等の基準です。
④児童扶養手当の支給対象
児童扶養手当を受けられるのは、「日本に在住の18歳以後の最初の3月31日までの児童を監護しているひとり親」です。
つまり、前述した②に示した児童を
①「監護している母(シングルマザー)」
②「監護し生計を同じくする父(シングルファーザー)」
③「父母に代わってその児童を養育している人(祖父母など)」、または「重度の障害がある父または母」
となります。
※母は「児童を監護」、父は「児童を監護し、かつ生計を同じくしている」ことが必要であることに注意!
※「監護」とは、監督・保護して養育していること。
※児童扶養手当を受給すると就学援助(給食費や学用品)が受けられるほか、JRの通勤・通学定期券が3割引で購入できます。
⑤児童扶養手当が支給されない場合
次の場合は児童扶養手当が支給されません。
①申請する方や児童が日本国内に住所がない。
②児童が里親に委託されている。
③児童福祉施設(母子生活支援施設・保育所・通園施設を除く)等に入所している。
④児童が父または母の配偶者(事実上の配偶者を含み、「重度の障害」の状態にある者を除く)に養育されている、もしくは生計を同じくしている。
⑤支給対象者(父・母・養育者)または扶養義務者に一定額以上の所得があるとき
事実婚であっても、児童が父または母の配偶者に養育されたり、生計を同じくするときには、児童扶養手当は支給されません。
なお、児童が里親に委託されたり、また児童福祉施設に入所すると、児童扶養手当が支給対象外となります。
⑥児童扶養手当の額
【参考】
①令和6年度の児童扶養手当の額(月額)
〇1人目……全額支給 45,500円 一部支給 45,590円~10,740円
〇2人目……全額支給 10,750円 一部支給 10,740円~5,380円
〇3人目……全額支給 6,450円 一部支給 6,440円~3,230円
②令和6年度の障害基礎年金の子の加算額(年額)
〇1人目……234,800円
〇2人目……234,800円
〇3人目…… 78,300円
児童扶養手当の額は次のとおりです。
児童扶養手当は、支給対象者や扶養義務者の所得により全部支給と一部支給があり、支給額は児童の数によって変わります。
例えば、児童2人を養育するひとり親が全部支給の認定を受けた場合は次のようになります。
44,140円(第一子) + 10,420円(第二子) = 54,560円
児童扶養手当の支給月は5月、7月、9月、11月、1月、3月で前月までの2カ月分が支給されます。
なお、児童扶養手当は認定請求のあった翌月分から支給されることになります。
⑦児童扶養手当と障害基礎年金との併給調整
児童扶養手当との併給調整では、支給される障害基礎年金全額ではなく「子の加算額」と児童扶養手当の支給額を比べます。
令和3年改正により、「児童扶養手当の額が障害年金の子の加算部分の月額」を上回る場合 、その差額を児童扶養手当として受給できるようになりました。
令和3年改正でみる「障害基礎年金等」とは、国民年金法に基づく障害基礎年金、労働者災害補償保険法による障害補償年金などのことで、障害厚生年金は対象外となります。
したがって、障害基礎年金等以外の公的年金等を受給している方※は、調整する公的年金等の範囲に変更はないため、これまでのとおり、公的年金等全額の月額が児童扶養手当よりも多い場合、児童扶養手当は支給されません。
※遺族年金、老齢年金、労災年金、遺族補償などの障害年金以外の公的年金等や障害厚生年金(3級)のみを受給している人
次の事例は、「障害年金2級受給の方が子を1人監護している」場合の併給調整です。
子の加算額:234,800円(月額約19,566円)と児童扶養手当:44,140円の併給調整
下記の計算式に当てはめ、児童扶養手当の支給額を算出する。
児童扶養手当 - 障害基礎年金の子の加算額の月額 = 支給される児童扶養手当
44,140円 - 19,566円 = 24,574円
児童扶養手当:24,574円
※上記は例示です。(詳しくは住所地の市町村でご確認ください。)
⑧注意する点
a.児童扶養手当の返還が必要となることもある
障害年金には遡及請求という請求方法があり、障害年金を過去5年分遡って請求することができます。
遡及請求により障害年金の支給が決定した場合、児童扶養手当は障害年金の受給が決定した時点から返還することになります。
ここで注意が必要となるのは、「児童扶養手当改正前」と「改正後」では児童扶養手当の返還金額が変わることです。
b.障害厚生年金3級の場合は要注意
障害厚生年金3級の場合は改正による影響はなく、これまでと同様に、「障害厚生年金3級の全体の月額」と「児童扶養手当」を比較します。
c.所得の計算方法も変更されることに要注意
令和3年3月の改正により、所得制限に関する所得の計算方法も改正になりました。
児童扶養手当の所得制限を計算する際の所得とは、地方税法の非課税所得以外の所得としています。
が、令和3年3月の改正後は、障害基礎年金等を受給されている方については、非課税の公的年金給付等(=障害基礎年金など)を含めた上で所得を算出することになりました。
これによって、所得が多く計算されることになり、児童扶養手当の額が全部支給から一部支給に変更(減額)される場合もあります。
※ 障害基礎年金を受給していない方、つまり障害厚生年金3級の方は、以前と同様に障害厚生年金の額は含めずに所得を算出します。
⑨まとめ
児童扶養手当は、離婚等により父または母と暮していない18歳までの子を監護・養育している方(ひとり親)に支給される手当のことです。
監護・養育している子が一定の障害の状態にあるときは、20歳未満まで児童扶養手当の支給が延長されます。
児童扶養手当は、世帯の所得等により支給されなかったり、一部支給となることがあり、定額の支給ではありません。
令和3年の改正により、障害基礎年金等を受けている人でも、「児童扶養手当の額が障害年金の子の加算部分の月額」を上回る場合 、その差額を児童扶養手当として受給できるようになりました。
児童扶養手当は申請しなければ支給されないので、自分が支給されるかもしれないと思ったら、住所地の市町村へ相談しましょう。
以上、『「児童扶養手当と障害年金の関係」について~ここが肝心!🙋~』について、お話しました。🙇
それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋
なお、よろしければ次のブログもご覧になってください🙇
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