特別編

『「糖尿病の方に関する厚生労働省からの通知」について~ここが肝心!🙋~』

前回は、『「児童扶養手当と障害年金の関係」について~ここが肝心!🙋~』について、お話ししました。😄

今回は、『「糖尿病の方に関する厚生労働省からの通知」について~ここが肝心!🙋~』について、お話しします。🙇

☆この度、次のとおり、糖尿病の方の取り扱いについて、厚生労働省年金局から事務連絡として通知が出されました。

この通知の内容について、「いったいどういうことなのか」、これまでの経緯からくわしく見ていきたいと思います。

①通知があったのは?

今年、令和6年4月にあった次の大阪高裁の判決の結果を受けて、今回の改正となったもようです。

1型糖尿病患者の障害年金支給認める 国が逆転敗訴 大阪高裁

2024年4月19日 19時21分( NHKサイトより)

免疫の異常などで血糖値を下げるインシュリンを体内で作れなくなる「1型糖尿病」の患者8人が障害基礎年金の支給を打ち切られたのは不当だと国を訴えた裁判で、2審の大阪高等裁判所は、1審とは逆に訴えを認め、支給を認めないのは違法だとして8人全員に年金を支給するよう国に命じました。




「1型糖尿病」は、免疫の異常などですい臓の細胞が壊れ、体内で血糖値を下げるインシュリンが作れなくなる病気です。

大阪や奈良などに住む患者8人は8年前、長年、受給していた障害基礎年金の支給を打ち切られ国を訴える裁判を起こして全員が勝訴しましたが、その後、国の審査で再び不支給となったことから2回目の訴えを起こしました。

3年前1審の大阪地方裁判所は訴えを退け、患者側が控訴していました。




19日の判決で大阪高等裁判所の本多久美子裁判長は、「この病気は根治が困難で、食事や仕事にも常に配慮を必要とするなど、日常生活に大きな支障がある。原告に支給を停止する理由があるとはいえず、支給を認めない国の決定は違法だ」と指摘しました。


そのうえで、「原告ひとりひとりの生活の様子を総合的に評価すると、『日常生活が著しい制限を受ける』と認められ、年金の支給対象である障害等級の2級にあたる」と述べ、1審とは逆に訴えを認め、不支給の決定を取り消し、8人全員に年金を支給するよう国に命じました。



厚生労働省「判決内容を精査した上で対応」

判決について厚生労働省は、「今後、関係省庁において判決内容を精査した上で対応していきたい」とコメントしています。

原告「やっと認めてくれてうれしい」

判決のあと、原告の1人の滝谷香さんは「やっと私たちの病気を認めてくれてうれしく思います。障害がある人の中には声を上げることができない人もいます。障害があるすべての人に目を向けてもらいたい」と話していました。




弁護団長の川下清弁護士は「原告全員の障害の重さ、日常生活の苦しさを真摯に受け止めてくれた結果だ」と話していました。

②「糖尿病」とは?

代謝疾患の代表的な病気として、糖尿病があります。

我が国の国民病とよばれる糖尿病。

その患者は全国で320万人以上とも言われており、おそらく、糖尿病とその合併症を患った方が多いのではと考えられています。

③平成28年6月の認定基準改正

平成28年6月1日から「合併症のない糖尿病の障害」については、次のとおり、障害認定基準が改正されています。

※改正前の障害認定基準については、次のページをご覧ください。

④糖尿病による合併症

合併症としては、慢性腎不全、脳梗塞、脳卒中、糖尿病網膜症、心筋梗塞、糖尿病腎症、下肢閉塞性動、 脈硬化症、糖尿病神経障害、皮膚疾患等があります。

特に、糖尿病患者の約10人に1人が、「糖尿病性神経障害性疼痛」だと言われております。

両足の先から左右対称にピリピリとした痛みやしびれですが、障害が進んでも痛みや温度を感じなくなり、日常生活に障害があります。

⑤合併症の初診日について

「相当因果関係」とは、糖尿病の場合、いわゆる合併症がある場合のことで、「前の疾病がなかったら後の疾病が起こらない関係」という意味です。



「相当因果関係」の有無については、具体的に規定されております。(前述の「認定基準」を参照

このことは、障害年金請求における初診日の確定に非常に重要です。



糖尿病の診断後、何十年と長期の療養をして慢性腎不全へ移行することで、人工透析を受けることになる患者が多く、また、初診日を特定できないことで申請できない方も多いのが実情です。

当事務所でも最長で40年前に遡って申請を行った方がおられました。

今にして思いましても、認定されたことがまるで奇跡のようです。



合併症が伴い長期間に及ぶ場合、慢性腎不全と因果関係のある糖尿病の初診日を明らかにしなければならず、もしかすると長期間経つうちに、カルテが廃棄されていたり、転医を繰り返したり、またあるいは病院が廃業していたり。

以上のように、初診日の特定が大変困難な場合もよくあります。

※1.認定基準では、糖尿病と脳内出血・脳梗塞との因果関係はないこと。

※2.社会的治癒も視野に入れて、初診日に加入していた年金制度が何であるのか、慎重に検討して手続きを行うこと。

⑥今後の「糖尿病」にかかる障害認定での取り扱い

今回の通知により、従来原則として3級とされていたⅠ型糖尿病。

それが2級になる可能性が出て来ました。

国民年金では障害等級は2級までしかありません。

そのため、初診日に国民年金制度に加入していた場合、障害基礎年金としてもらうことはできませんでした、

が、今回の改正により、国民年金制度に加入していた方でも、障害基礎年金2級としてもらえる可能性が出て来たことになります。

⑦まとめ

少し前にこのブログで紹介しました「眼瞼痙攣の取扱い」と同様に、関係者等の声が反映された結果です。

多数の方がこうして声を上げていくことで、政府もはじめて「そんな問題があるのか?」と認知することになります。

おかしいと感じてもただ単に黙っているだけでは、「別に意義もないようだし」としておかしいとは認知されず、そのままにされてしまいます。

今はたとえ認定されずとも、おかしいことにはおかしいと声を上げていくことは、障害認定においても非常に大切なことであると私は思います。 

以上、『「糖尿病の方に関する厚生労働省からの通知」について~ここが肝心!🙋~』について、お話しました。🙇


それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋

『あきらめないことが大切だ!』
~原告のみなさんのこれまでの頑張りに対して敬意を表します~
2024年11月25日