『「稼得保障の制度」として「他の稼得保障制度との関係」~「障害者の社会参加の支援」として』について~ここが肝心!🙋~
前回は、『「客観的な書類であること」~社労士の代理申請との関わりは?』について、お話ししました。😄
今回は、よくある質問の中から、『「稼得保障の制度」として「他の稼得保障制度との関係」~「障害者の社会参加の支援」として』について、お話しします。🙇
みなさん、こんにちは。
私は、徳島障害年金サポートセンターで障害年金サポーターをしている、楠 昇と申します。
「自らが病気で障害年金をもらった社労士が、あなたの障害年金のお悩みを解決」をうたい文句とし、本業の障害年金専門社労士として、またNPO法人の代表として、現在、活動中です。
1.『障害年金は稼得保障である』ということ
今回は、「障害年金の性格」についてです。
よくご質問をいただくことの中に、さまざまな稼得保障の制度との関係についてがあります。
雇用保険法の失業手当、また健康保険法の傷病手当金、あるいは生活保護費、もちろん減額された報酬との関係など本当にさまざまです。
まず、おさえておくべきことは、「障害年金とは何なのか?」ということについてです。
障害年金とは、病気やけがにより、これまでどおりに就労を続けていくのについて支障が出た。
もっと進んで就労できなくなった上に、さらに家庭における生活面でも支障ができることになった。
このようなときに、経済的に困窮することのないよう支給される「稼得保障制度」であるということ、これが「障害年金の性格」です。
2.『稼得保障である』とは?
では、「稼得保障制度」とは何かについてです。
「稼得」とは、「労働・サービスの提供により収入を得ること」です。
一般には、「稼得」とは「労働による対価として報酬を受け取ること」であり、これが「病気やけがにより、これまでどおりの「稼得」ができなくなったこと」に対して保障されるもの、それが「障害年金」です。
「稼得能力の減退」は程度に応じて、「就労のときに少々あるだけのもの」もあれば、「日常生活面にまで大変影響を及ぼすもの」も存在する。
この程度を「障害等級」として区分し、年金制度において、病気やけがによって「損なわれた稼得能力の保障として支給されるもの」されるのもの、それが「障害年金制度」です。
3.障害年金以外の『その他の稼得保障制度』
年金制度以外にも、稼得保障としての制度があります。
それが、雇用保険法の「失業手当」や健康保険法の「傷病手当金」、あるいは、生活保護法の「生活保護費」であったりします。
これらは、全て各法律に基づいて支給されるものです。
法律については、全て「何のために設けられたのか」という趣旨があります。
このことは、各種の法律の一番先頭に、条文として規定されています。
ただ、これらは社会保障制度として、重複して支給ができないことになっております。
それは、重複することで、もらいすぎることを防止するためです。
a.『雇用保険法の失業手当』
雇用保険法の「失業手当」については、「失業の状態」であることが前提となります。
「失業の状態」にある場合で、受給要件を満たす人が、「就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」場合において、支給されるものです。
手続きの上でも、ハローワークに行って、「求職の申込」という手続きにより、「仕事を探しています。手伝ってください。」という意思表示をして、仕事が見つからない間の稼得保障ということになります。
大事なのは、「働くことのできる能力」ということであり、「病気やけがによって働くことのできない人」は「求職の申込」さえできず、当然、「失業手当をうけることはできない」ことになります。
このことで、無理をして受給された場合、虚偽の申請に当たることとされ、不正受給や詐欺行為にあたる可能性があります。
「失業手当金」とは、原則として、「元気で働けるという就労可能な人が、仕事先を見つけるまでの間について、支給される稼得保障」ということになります。
近年では障害者雇用という仕組みもありますが、それも障害の程度に応じて仕事をできる人のためのもの。
障害に見合う業務内容ということから最低賃金の補償はなかったりします。
それでも、「就労可能」ということで、失業手当はもらえるようです。
b.『健康保険法の傷病手当金』
「健康保険法の傷病手当金」については、在職中において、病気やけが等により、療養のために4日以上仕事を休んでいることで支給されるものです。
療養のために仕事を休み始めた日から連続した3日間(待期期間)を除いて、4日目から支給されます。
原則として、「給与の支払いがないこと」が条件となりますが、「給与が一部だけ支給されている場合」は、「傷病手当金から給与支給分を減額して調整の上、支給される」ことになります。
退職しても、すでに受給されていた人は「継続給付」ということで、引き続き、もらうことも可能です。
ただし、在職中とは支給要件の一部がきびしくなります。
傷病手当金とは、「在職していて健康保険に加入している人が、病気やけがにより療養することとなり、報酬が支払われない、あるいは報酬が減額された場合の稼得保障」ということになります。
c.『生活保護法の生活保護費』
「生活保護法の生活保護費」は、「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活(日本国憲法の規定)を保障し、その自立を助長する制度」です。
「年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用することを義務」とされています。
したがって、前述のどんな稼得保障の制度を利用しても、その制度では憲法に保障される「最低限度の生活」を営むことができない場合に、利用できる制度です。
4.その他の稼得保障の制度との関係は?
冒頭でも申し上げましたが、稼得保障の制度が重複することで、元の報酬を上回ること、要するに「もらいすぎ」となることがあってはなりません。
このため、前述3の「障害年金」と「その他の稼得保障の制度」の間には、このことを避けるための、さまざまな調整規定等が存在します。
簡単に申し上げると、「a.雇用保険の失業手当」の場合は、調整規定そのものはありません。
ただし、法立条文上において、「意思と能力を有する」ということから、障害年金制度の「病気やけがにより就労できず、日常生活でも支障がある」ということとは相反することとなります。
このことから、「法律上、相反することから特に調整規定を設けていない」と、厚生労働省からお聞きしたこともありました。
現在の障害年金制度は、原則として就労している場合においては、障害等級3級に該当する場合というのも、条件付きの例外のような取り扱いとなっております。
「調整規定がないから両方もらえます」と言われている、障害年金専門をうたう社労士事務所も存在します。
その根拠として、障害者雇用制度のことを挙げています。
ですが、まず、これらの「制度間の規定のおかれた趣旨に反しないかどうか、慎重に見極めること」が非常に大切となります。
それは、代理人として行った結果は、最終的に依頼をされたご本人のしたこととなるからです。
「結果にコミットする」
このことも国家資格を持つ者としての信頼に関わることとなります。
「b.健康保険法の傷病手当金」については、簡単に申し上げると、障害年金が優先されて支給。
その「年金額を傷病手当金と差し引きし、傷病手当金の差額があればその差額を支給」する。
つまり、合計では傷病手当金の支給額を超えることはありません。
「c.生活保護法の生活保護費」については、『生活保護費の額から「さまざまな稼得保障の制度による給付額の合計額」を差し引きし、生活保護費に差額がある場合にのみ、その差額を支給』することとなります。
これも、つまり、生活保護費の支給額を超えることはないこととなります。
5.障害者等の社会参加の支援としての役割
「稼得保障制度」という位置づけの障害年金ですが、別の意味合いも存在するのではないか、ということです。
それは、「障害者の社会参加への支援」という役割です。
実は、厚生労働省の社会保障審議会年金部会の令和4年の夏前の会議において、委員の先生がこのことについて言及されています。
サイトに議事録があれば見られることでしょう。
私は、自分自身が障害及び難病を持つ者として、このことは大きな意味があるを思います。
私も、開業前、また開業してからも大変悩みました。
徳島だけなのかどうか不明ですが、現実の世の中には障害者支援というものが本当に存在しない。
私は、県庁時代や、我が子のことで障害者団体の役員等をしていて、「常識的にこうした支援はあるもの」と思っておりました。
が、長い療養期間のうちになくなったのか?
名前だけのものが本当にほとんど全てでした。
ともかく、現実には存在しないことを知り、私は愕然としたのです。
心身にハンディを持つ者が、健常者と混じって競争するのは、本当に大変です。
同じことをしていては、太刀打ちなどできるはずがありません。
「時間をかけて、努力すれば」と思っておりました。
しかし、その上には、さらにまだ法的にも問題となる言動等の数々。
私は、この重圧を跳ね返すのにまた病状が悪化することもありました。
「何のための障害者差別解消法なんだ?」
理解があるどころか、問題となる言動も多々ある・・・。
このことに私は愕然としたのです。
「これでは障害者の社会参加はできないなあ」
私はこのように感じました。
そこで、「障害年金の存在が、障害者の社会参加への支援となり得る」という、年金部会の一人の委員の先生のご意見。
思わず私は、「この先生、さすがだ!」と思ってしまいました。
こうした障害者等の後押しとなる役割として、もっと障害者が社会参加することや経済的自立することを、私は政府等が推し進める必要があるのではと存じます。
6.まとめ
以上のように、稼得保障の制度には障害年金以外にもさまざまな制度が存在します。
ただし、その必要な人の状態によって、利用できる制度が異なる場合もあります。
そして、制度のもとになる法律の趣旨によれば、重複してもらうこと自体がおかしいということで、最悪の場合、違法となることもあり得る。
また、違法ではないとしても、金額において、必要以上に重複して支給されることを防ぐために調整規定もある。
経済的に困窮している方への給付という意味をご理解の上、「稼得保障の制度」ということを鑑みて、この障害年金の制度とはどういったものなのか、是非にご理解いただきたいと存じます。
また、同時に、障害年金の制度が持つ、「障害者の社会参加への後押しとしての役割」についても、お考えいただきたいと存じます。
最後になりますが、
私は、「県庁時代における障害福祉業務に従事した経験、また我が子のために障害者団体の役員に従事した体験」から、
私と同じく、障害や難病を抱えるみなさん、あるいは、かつての私と同様に、障害を抱える子供さんをお持ちの、お父さんお母さんのお力になれればと存じます。
また、私は、「仕事や家庭等を失っても、また社会復帰することができること」、あるいは、「難病や障害を抱えていても、こうして働くことができること」を、
自分自身の姿を見せることで理解していただき、現在、障害や難病でお悩みのみなさんにも、どうか諦めずに頑張っていただければと存じます。
以上、『「稼得保障の制度」として「他の稼得保障制度との関係」~「障害者の社会参加の支援」として』についてでした。🙇
それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋
