特別編

『「相談事例から考える~なぜ原則よりも例外なのか?」について~ここが肝心!🙋~』

前回は、『障害年金を申請する上で大切なこと~「なぜ書類が必要なのか?」~』について、お話ししました。😄

今回は、『「相談事例から考える~なぜ原則よりも例外なのか?」』について、お話しします。🙇

みなさん、こんにちは。
私は、徳島障害年金サポートセンターで障害年金サポーターをしている、楠 昇と申します。

「自らが病気で障害年金をもらった社労士が、あなたの障害年金のお悩みを解決」をうたい文句とし、本業の障害年金専門社労士として、またNPO法人の代表として、現在、活動中です。

1.『軽度知的障害と発達障害がある場合』について、不支給決定のことでご相談

次は、しばらく前にいただいた相談の内容です。

軽度知的障害と発達障害を持つ30台女性のお母さんから、不支給決定に対するご相談がありました。




『娘はこれまでずっと普通に生活してきました。

結婚もして出産し、その頃から状態が変わってしまいました。

離婚をして、実家の私どもの家に帰って参りました。

結婚する前も、県外へ一人でイベントに出かけるなどしていました。




確かに、周囲と比べると、「ちょっと反応が鈍いのかな?」と思うこともありましたし、「性格なのかな?」と感じることもありました。

それでも、まさか、娘に障害があるとは思えませんでした。

大変ショックでした。

軽いですが、知的障害とも言われ、発達障害と診断。今は本当に世話も大変です。




ただ、これまで知的障害と言われたことがなく、療育手帳を持ってもおりません。

「知的障害と発達障害が重なった場合は、同一障害として、出生日を初診日とする」ということで、この度、不支給決定という通知がありました。

これはどうなのでしょうか?

お医者さんは「診断書は間違いではない」とお話を聴いてもらえません。




私たち親ももう歳です。娘の今後のことが気になります。

どうしたら良いのでしょうか?』

2.障害を抱えるお子さんをお持ちの親の気持ち

このお母さんのお気持ちが、私には痛いほどよくわかります。

私も我が子が重度の知的障害と自閉症を持っていました。

当時は、同じような知的障害の子供を持つ親の会で役員をしていて、たくさんのお母さんから同様のことをお聞きしたものです。




「親は子より先に逝く」

この言葉をスローガンに、みんな一緒に子供の将来のことで、闘ってきました。

毎晩、夜になると、子供の寝顔を見ながら「お母さんと一緒に死のうか・・」と涙するお母さん。

「自分たちが死んだら、その後、我が子はいったいどうなるのか?」

このことに、若かりし日の現在の徳島県知事が耳を傾けてくれたものでした。

時はちょうど、ヘルパーさんの制度ができた頃くらいのことでした。




重度の知的障害になると、自分たちが考えて行動することができない。

意思表示さえもできない我が子。

お正月の親戚の寄り合いでも、「くるくるぱー」の身振りをされて、怒り心頭したお父さん。

もう二度と、娘さんをお正月に伴うことはなかったそうです。

こうして、親子そろってだんだんと引きこもってしまい、社会と隔絶していくご家族。




時には「生活保護を切られた。もう死ぬしかないです。」と電話口で言われたことがありました。

車椅子に乗せた2人の子供たち。

1人を1人の親が世話しなくてはならなくなり、お父さんも仕事を辞めざるを得なくなっていました。

「働きたくても働けない・・・」

それなのに、ある日、突然、市役所担当から、突然、生活保護費を打ち切ると告げられたのでした。




県庁から帰宅していたため、私は部屋着になっていました。

が、この後、すぐに再びスーツを着て、私は、午後7時前に市役所へご家族を迎えに行き、そして車にお乗せして市役所まで、直談判に行ったこともありました。

そして、課長以下の管理職の皆さんに、職場へ戻って来ていただきました。




「人の命がかかっているんだ」

このお話はご家族等の関係者でなければわからないかもと存じます。

市役所にとっては「大変迷惑な奴だ」ということでしょう。

「お前も県庁の職員だろう!」

そう、陰できっと言われていたことでしょう。

そのため、県庁でもいろいろな誹謗中傷により、うつ病、そして難病で余命宣告を受けて、今日に至ります。




でも、こうしたお父さんやお母さんの声に耳を傾けてくれた、出たばかりの一人の若い国会議員がいた。

私は本当にうれしかったです。

3.他の精神疾患がともに併存している場合

さて、「他の精神疾患がともに併存している場合」についてです。

まずは、障害年金申請の際の考え方ですが、「精神疾患は原則として全体的な症状で総合判断」されます。




『「知的障害や発達障害と他の精神疾患やパニック障害等の神経症を併発している場合」については、以下のケースを目安に発病の経過や症状から総合的に判断する。』

と、こうしたものとされています。 

以下は、省略して、原則的な考えのみをまとめてあります。




  
1.うつ病又は統合失調症と診断されていた者に、後から発達障害が判明した場合は、そのほとんどが診断名の変更であり、別疾病とせず「同一疾病」として扱う。
 

2.発達障害と診断された者に、あとからうつ病や神経症で精神病様態を併発した場合は、うつ病や精神病様態は、発達障害が起因して発症したものとの考えが一般的であることから、「同一疾病」として扱う。 


3.知的障害と発達障害は、いずれも20歳前に発症するものとされていることから、知的障害と判断されたが障害年金の受給に至らない程度の者に、あとから発達障害が診断され、障害等級に該当することとなった場合は、原則「同一疾病」として扱う。


4.知的障害と診断された者に後からうつ病が発症した場合は、知的障害が起因して発症したという考え方が一般的であることから「同一疾病」とする。 


5.知的障害と診断された者に、あとから神経症で精神病様態を併発した場合は「別疾病」とする。


6.発達障害や知的障害である者に、あとから統合失調症が発症することは、極めて少ないとされていることから原則「別疾病」とする。

4.「原則には例外が伴う」ということ

世の中、全てのことを網羅した本など存在しません。

だから、ありとあらゆる原則とする規定には、ほぼ全てといってもいいほどの、例外が存在します。

県庁時代もそうでしたが、大切なことは、原則よりも「例外の存在」であることの方が多い。

このことは、障害年金の申請においても、同じことが言えるものです。




ただ、専門的なことになるので、膨大な量の知識の習得が必要となります。

だから、年金事務所に相談に行っても、原則論が答えられれば良いほうです。

なぜなら、年金事務所の相談は、「障害年金の申請だけではない」からです。

幅広い知識が必要となる分、専門的な部分まで踏み込む余裕はありません。

一般の方はもっとになります。




そこで、私たちのような専門とする者が必要となります。

ただ、私が自分でも思いますが、巷の人から見れば「一種のオタク」のようなものではないか、と常々考えています。




繰り返しとなりますが、「例外の存在に目を向けることによって、原則の考え方がより深まる」ものです。

原則だけ知っていても、それは本当に効果を発揮することはできません。

このこと、非常に大事なことなんです。

5.今回のケースについて

さて、今回のケースについてです。

「知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合」についても、障害年金申請の際の考え方ですと、「精神疾患は原則として全体的な症状で総合判断」されます。

今回は、前述3の3に次の原則により取り扱われています。



・・・・・・・・
3.知的障害と発達障害は、いずれも20歳前に発症するものとされていることから、知的障害と判断されたが障害年金の受給に至らない程度の者に、あとから発達障害が診断され、障害等級に該当することとなった場合は、原則「同一疾病」として扱う。

・・・・・・

例えば、『知的障害は3級程度であった者が社会生活に適応できず、発達障害の症状が顕著になった場合などは「同一疾病」とし、事後重症扱いとする。』というようになります。


 
ところで、ここでも例外が存在します。

それについては、次のとおりです。

『なお、知的障害を伴わない者や3級不該当程度の知的障害がある者については、発達障害の症状により、はじめて診療を受けた日を初診とし、「別疾病」として扱う。』



このことから、今回のご相談の内容は、この『 』内にあたるものと考えられて、私はお返事をいたしました。

6.まとめ

今回、大切なことは、「原則には、ほぼ全てにおいて、例外が存在する」こと。

このことを知らないと、原則論では歯が立たないことの方が多く、役にたちません。

この度のご相談も、結局は例外的なことから解決へと運ぶことができそうです。




「まず、例外を押さえること」

その上で、

「あらためて原則的な考えに立ち戻る」




こうした姿勢で、「何か糸口はないのだろうか?」とすることを、私はとても大切にしております。

みなさんもこうしたことをされてみては、いかがでしょうか?

最後になりますが、

私は、「県庁時代における障害福祉業務に従事した経験、また我が子のために障害者団体の役員に従事した体験」から、

私と同じく、障害や難病を抱えるみなさん、あるいは、かつての私と同様に、障害を抱える子供さんをお持ちの、お父さんお母さんのお力になれればと存じます。



また、私は、「仕事や家庭等を失っても、また社会復帰することができること」、あるいは、「難病や障害を抱えていても、こうして働くことができること」を、

自分自身の姿を見せることで理解していただき、現在、障害や難病でお悩みのみなさんにも、どうか諦めずに頑張っていただければと存じます。

以上、『「相談事例から考える~なぜ原則よりも例外なのか?」』についてでした。🙇

それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋

『違い~多種多様な人たち~』
~障害も個性のひとつ~
2025年2月3日