『「最後のセーフティーネットとしての障害年金~(心の財第一なり~社会への恩返し)」~ここが肝心!🙋~』
前回は、『不支給決定でのご相談から~「一の太刀を疑わず、二の太刀要らず」の心構え~』について、お話ししました。😄
今回は、『最後のセーフティーネットとしての障害年金~「心の財第一なり~社会への恩返し」』について、お話しします。🙇
みなさん、こんにちは。
私は、徳島障害年金サポートセンターで障害年金サポーターをしている、楠 昇と申します。
「自らが病気で障害年金をもらった社労士が、あなたの障害年金のお悩みを解決」をうたい文句とし、本業の障害年金専門社労士として、またNPO法人の代表として、現在、活動中です。
1.この1年間で最も多かったご相談とは?
前回の分と重なる部分がありますが、今回は内容を特定させて、お伝えさせていただきます。
『すでに精神疾患にて障害年金の2級をもらっている方が、更新手続きで3級になったこと』での相談。
なんと、この1年間で20件ほどございました。
その精神疾患の方たちのうち、大半が「うつ病」によるものでした。
私自身、過去に、難病や心臓弁膜症ではもらうことができず、うつ病にてもらっていました。
そのため、この同様のご相談が多いことについて、昨年夏頃より「なぜなんだ?」と、私は、大変、疑問に感じておりました。
何度かお話をしたことのある、大きな病院の精神保健福祉士の方たちにも、ご相談したことがあります。
ただ、障害年金のことに没頭しているのは、たぶん、徳島県内では私くらいのもの。
そう考えると、その私が相談した方たちの中には、「ちょっと、今、他の用事もあって忙しいのに。どうして障害年金のことなの?」と、ご迷惑だった方もおいでになると存じます。
ですが、障害年金しかやっていない私にとっては、このことは重大事!
特に、精神疾患でもうつ病の方が多いことに対して、「なんで??」と、納得することができずにおりました。
2.「2級の更新がなぜ?」
これが、新規に申請するに当たって、「3級」を目標だとすれば、私もわかる気がします。
「就労していることが困難となり、配慮のある職場で・・・」ということで、ある意味、グレーゾーン的なものが存在することがあるからです。
ところで、社労士の中にも、「障害年金の更新って何かすることある?」という方が多い。
一般の方もたいていは、「日本年金機構等から送られてきた診断書を提出するだけ」という方が圧倒的に多いことと存じます。
たいていは、社労士も一般の方も通常は、提出するように求められた書類等を、ただ提出するだけです。
当然、本当にそれだけで済むのであれば、費用をかけずに社労士に頼ることなく、もらっている方ご自身で手続きできます。
お医者さんが作成された診断書を、たった送るだけのことなのですから。
ですが、
『「2級」であれば、「3級」のようなグレーゾーン的なものってあるのだろうか?』、
私にはちょっと頭に浮かびません。
これは、「どうも診断書以外には原因はないのではないか?」と、私は思わざる終えないのです。
3.うつ病等精神疾患における障害等級の「2級」とは?
障害等級「2級」については、次のとおり、規定されています。
①「障害認定基準」では、『精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの』と規定。
0000144228.pdf(日本年金機構のサイト)
②同じく、障害認定基準において、「障害の等級と障害状態」に関して、さらに踏み込んで次のように記述あり。
『身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。
この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。
例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食づくり、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、
すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。』
③障害認定基準を受けて定められた「認定要領」では、「感情障害(気分障害)」の「2級」について、次のように規定。
『気分、意欲・行動の障害および思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、またはひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの』
4.「2級 ➡ 更新後3級」はなぜか?
3級と異なり、「2級」では「就労することができない程度」とのことから、「日常生活の状態について、正確に押さえること」が、大変重要となって参ります。
障害年金の認定において、『「日常生活」とは「単身生活をしたと想定して」』という、ちょっと診断書の様式を拝見しただけでは、見つけることができないような要件がございます。
診断書様式(精神疾患用)(日本年金機構のサイト)
私も、自分自身がもらっていた障害年金に、このように「単身生活を・・」という部分があったとは、この仕事を始めるまでは全然知りませんでした。
このような「細かな箇所に至るまでを、精神科の非常に短い診察の間に、医師がどこまで把握できるのか?」
このことが一番大きな理由であると私は考えます。
私が障害年金の申請の依頼をいただいた方たちのうち、精神疾患の方はみんな口々にこう言われます。
「5分もない診察時間で、本当にどれほども話すことができない。」
診療報酬では確か、一番低いものがが「30分未満」となっていたように思います。
しかし、昨今、ストレスによる精神疾患の増加は、毎年増加。
年々増加していく患者たち。
このことから、どうしても診察時間が短くなってしまうのでしょう。
が、この5分足らずの時間では、患者から治療に必要な情報を聴き出せるのか?
また、そのことを医師法に規定されているように、『診療内容を診療録(カルテ)に記録すること』ができるのか、甚だ疑問に感じます。
それとともに、当然、「患者であるご本人も、障害年金について詳しくない場合が多い」ことも、大きな理由の一つだと思います。
5.過去における県単位での認定の記憶
しばらく前までは、国民年金の障害基礎年金の認定については、都道府県単位で行われていました。
対して、厚生年金の障害厚生年金は、一律に東京都で一括処理されていたのです。
なぜ、現在のように、障害基礎年金も障害厚生年金と同じく、東京都で一括して認定となったのか?
それは、全国の都道府県において、障害認定率があまりにもかけ離れていたことが、最大の理由であるということです。
「障害基礎年金の障害認定の地域差に関する調査結果」を公表
この厚生労働省の公表された調査結果の中には、次のような記載も見られます。
『障害基礎年金について新規に申請を受けて決定を行った事例のうち、日本年金機構の都道府県ごとの事務センターにおいて不支給と決定された件数(注)の割合(平成22年度から平成24年度までの3年分で算出したもの。以下「不支給割合」という。)を都道府県ごとに比較すると、最も高い大分県は24.4%、最も低い栃木県は4.0%であり、地域差が認められる。』
平成29年4月以前は、「障害基礎年金」については都道府県ごとに審査を行っており、審査に関しては最大で6倍の格差があり、当時は「通りやすい都道府県」「通りにくい都道府県」というのが存在しました。
私のいる徳島県では認定率は非常に高く、反対に、徳島県のすぐ近県であるのに、認定率が信じられないほど低かった都道府県もあったようです。
このような状況を是正するために、全国一括して認定を行うようになった次第です。
すると、当然のこと、低かった都道府県の方は認定率が大幅にアップし、反対に、高かった私のいる徳島県では大幅ダウンしました。
今でも、精神科のお医者さん等の関係者から、「障害年金がなかなかもらえなくなった」と言う声を、私はよく耳にいたします。
かつて、都道府県で認定に携わっておられた医師の方も、現在では認定業務を離れてしばらく経ちます。
平成28年以降、障害年金について、様々な認定基準の改正、その他、小さな改正等も加わって参りました。
しかし、その当時、認定に携わっていた医師も、すでに認定業務から離れている。
そうしたことで、その知識は最新のものに置き換わっておらず、当時のままだと思われておられる様子がうかがえます。
「今までこれでやってきたから」
「私も認定に携わってきたから」
実際に、徳島県において、依頼者である精神疾患の方たちから、主治医から耳にしたという言葉です。
診断書の件で、日本年金機構や厚生労働省の規定をお送りして説明に伺おうと、私は依頼者である患者を通じて、何十回と面談を求めたことがありました。
が、同じように当然、私に会っていただけた医師の方は、本当に数人もおられませんでした。
だから、
『診断書の作成において、日本年金機構の作成要領にあるような基本的な事項について、誤りが見られるので。』
このことを文書にてお伝えしても、修正されることは本当にまれとなっております。
6.患者の生活実態に対する理解
「医師は患者の治療に当たるために存在する」
そう言われる医師の方もときどきおられました。
ごもっともだと思います。
ただ、なかなか新規で申請しても,予算の増加が見込めないことから、なかなかもらうことのできない生活保護。
このことを説明しても、医師には声を聞き入れてもらえない方たちがとても多い。
『それでは、働けなくなって方たちは、生活するのもままならない状況にあるのに、どうするのか?』
このように、私は過去に何度か、依頼者である患者を通じて、医師にお手紙でお伝えしたこともありました。
『それは、治療とは関係ない、行政が考えることだ。』
そのように依頼者を通じて言われることが、ほとんどでした。
『病気で働くことができなくなった人たち。
そのままにしておけば、やがては、病院へ通院することもままならなくなる。』
このことは、自明の理だと言わざるを得ません。
7.稼得保障の制度としての障害年金の位置づけ
『生活保護費をもらうことは至難の業と言わざるを得ない。』
これは、私が県庁に入った1984年当時から言われていた言葉です。
ホームヘルパーの制度が出来た頃には、政府から内々で、「受給者を半分にしろ」とのお達しもあったようです。
この時期、「公営住宅の数も半分にしろ」と、違う部署の方にも同様のお達しがあったそうです。
その理由の一つは、当時、国会で議員の一人の方が発言された言葉だと思います。
「税金を払ってない人たちに、なんで税金を使用してまで、する必要があるのか?」
この発言を支持する議員も多く、そのことがどうも原因ではないかと、当時の県庁の関係者は口々に話しておりました。
近年でも、コロナ禍の最中に大臣が「生活保護を申請するように」と発言。
「これまで生活保護はなかなかもらえなかったのに・・?」
このように、マスコミ等でも騒がれたことがありました。
でも、実際には、地元のある生活保護課の課長いわく、
「予算が増えたものでもないのに、大臣の発言を受けて、住民が生活保護費の申請に殺到して、大変なことになっている。」
と、このような有様でした。
このことをよく知る私は、
「障害年金こそ、最後のセーフティーネットである」
と考え、日々、業務に取り組んでおります。
それは、自分自身が障害年金をもらっていて、約13年間以上も私は我が身で味わったのです。
そうしたことから、とても他人事とは思えません。
「助けてくれる、助言してくれる。24時間対応の窓口など、実際にはどこにも存在しない。」
こうしたことを私は我が身のことで、よく理解しています。
だからこそ、私は障害年金の、この仕事に打ち込んでいる次第です。
8.依頼者の中で実際にあったこと
あるとき、「うつ病で20年も同じ病院にかかっていた方」がおられました。
病状が悪化したことで、20年勤務された職場を辞めざるを得なくなった。
そのため、障害年金の申請を当事務所へ依頼してきたのです。
作業を進める最中に、必要があったことから、カルテの開示請求をいたしました。
病院は嫌がりましたが、結局、法定の5年間分のコピーをいただくことができました。
ところが、そのカルテが真っ白であったのです。
処方された薬の名前しか、記載がされていない。
カルテの記載を基にして、診断書や証明書は作成されることになっております。
そのため、診断書の作成ができなければ、障害年金の申請ができないことになります。
「医師は診察をした際には、診療録を作成しなければならない。」
医師法にこのような内容が規定されています。
ですから、医師法違反ですし、このことを関係機関へお伝えもしました。
これまで障害者手帳や医療費の公費負担の制度のことで、申請、更新の手続きを度々行われてきた、そのときの依頼者。
依頼者は、その度毎に、申請書類に添えて毎回必ず、診断書を提出されてきました。
その依頼者が障害年金を申請するにあたって、初診日を基に制度設計された障害年金の制度について、私が説明を行いました。
この方は、大変きちょう面な方であって、診断書についても、全てのコピーを残されておりました。
ただ、診断書の内容にまで疑問をお持ちになったことはありませんでした。
当然だと私も思います。
このため、「診断書ごとに初診日が違っている!」
このことに驚いて、依頼者の方はご自宅で確認の上、私に電話をかけてこられたのです。
「診断書が全部、初診日、違うんですけど・・?」
「ええ!?」
まさに、二人で唖然とした次第でした。
依頼者は患者として、その病院にしか、受診したことがありませんでした。
驚かれるのも無理はありません。
これは、医師法違反もありますが、その上、公文書偽造にも当たることです。
後日、相談に来られた依頼者ご夫婦の姿を、私は今も忘れることができません。
当時、家庭に車を所有していたら、生活保護はもらえなかった。
他にも制約が多々ありました。
このとき、依頼者のご家庭では、働き始めた子供さんを始め、パートに出る奥さんも、それぞれ車を所有されていました。
大黒柱に万が一のことがあったこのとき、
「いったい、どうすれば良いのか?」
大変、深刻なご様子であったことは言うまでもありません。
「まさか、家族の所有する車を全部、処分することになるのか?」
大変、困惑した表情をされていました。
私は何も申し上げることができませんでした。
そこで、県庁や地元医師会に相談申し上げることしか、私はできませんでした。
上司であった元副知事等にも相談しました。
その病院のいろいろな問題となっていることを話しもしました。
でも、これといって、名案はさっぱり出ませんでした。
このことを説明をした際のご夫婦の顔を、私は今でも忘れることができないおります。
怒り、あるいは涙を流す依頼者等に対して、本当にこれ以上、何もできない自分が嫌になることが多々ありました。
9.まとめ
「障害年金こそが、本当の最後のセーフティーネットである。」
私はたった一人で13年間以上にわたり、障害年金、そして障害福祉制度のおかげにより療養生活を続けてくることができ、実感いたしました。
だから、この言葉について、私は間違いないものだと考えております。
生活保護費については、しばらく以前に、このブログの中でお話ししたことがありました。
利用できる制度を全て使用して、それでもなお必要性があると認められた場合に、日本国憲法の生存権に基づいて、支給をされるという制度、それが生活保護費です。
障害年金の申請においては、複雑な作業を必要とする場合もあります。
とても、素人の方では手続きは無理。
そのようなことから、私たち社会保険労務士が支援をすることもあります。
その場合、当然ですが、営利事業であることから、費用が発生します。
ただ、この費用については、厚生労働省によると、生活保護費においては「経費算入」と認められれば、本人に代わり支出することができることとなっております。
このことによって、毎月の生活保護費を、障害年金分だけ抑えることが可能となります。
これを実施することによって、もらえた障害年金の額の分が、そのまま不要となり、予算が浮くことになります。
すると、生活保護費全体でみれば、かなりの予算が残ることから、他に生活保護費を必要とされる方へ支給することが可能となります。
生活保護費の申請者は年々増加していると、少し前に政府の発表があったのを耳にいたしました。
こうした仕組みを整理することで、今後、生活保護費の申請者に対して、現在よりも多くの方へ配慮することもできるはずです。
ただし、この「経費算入」に関しては、取り扱う住所地の市町村ごとに認定されるかどうか、判断が分けれております。
このことをきとんと整理し、この仕組みを活用することで、経済的に悩む方々に対して配慮することも可能となるはず。
このように、障害年金の制度の活用によって、新たな住民への配慮を行うこともできる。
自分自身が本当に病気で経済的にも困った経験から、こうした取り組みを進めていくことが、障害年金サポーターとしての、私なりの社会への恩返しのつもりでおります。
最後になりますが、
私は、「県庁時代における障害福祉業務に従事した経験、また我が子のために障害者団体の役員に従事した体験」から、
私と同じく、障害や難病を抱えるみなさん、あるいは、かつての私と同様に、障害を抱える子供さんをお持ちの、お父さんお母さんのお力になれればと存じます。
また、私は、「仕事や家庭等を失っても、また社会復帰することができること」、あるいは、「難病や障害を抱えていても、こうして働くことができること」を、
自分自身の姿を見せることで理解していただき、現在、障害や難病でお悩みのみなさんにも、どうか諦めずに頑張っていただければと存じます。
以上、『最後のセーフティーネットとしての障害年金~「心の財第一なり~社会への恩返し」』についてでした。🙇
それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋
