『「障害年金の不支給急増と審査体制の変遷~当事者の声を活かした制度へ」~ここが肝心!🙋~』
前回は、『「障害年金専門社労士が語る、現場で感じた“生きる力”」~ここが肝心!🙋』について、お話ししました。😄
今回は、『「障害年金の不支給急増と審査体制の変遷~当事者の声を活かした制度へ」~ここが肝心!🙋~』について、お話しします🙇。
みなさん、こんにちは。
私は、徳島障害年金サポートセンターで障害年金サポーターをしている、楠 昇と申します。
「自らが病気で障害年金をもらった社労士が、あなたの障害年金のお悩みを解決」をうたい文句とし、本業の障害年金専門社労士として、またNPO法人の代表として、現在、活動中です。
あらためて、みなさん、こんにちは。
ライトハウス社会保険労務士事務所 徳島障害年金サポートセンターの楠です。
障害年金の「不支給」判定が急増し、大きな注目を集めています。
2024年度には前年比で約2倍、約3万人が不支給と判定されました。
この背景には、日本年金機構の審査体制の見直しや、内部での再判定、障害者団体からの声など、さまざまな要因が絡んでいます。
本記事では、障害年金審査の新旧フローや、なぜ不支給が増えたのか、今後の課題と当事者参画の必要性、そして実際に寄せられた対応の事例について解説します。
1.障害年金審査フローの新旧比較
障害年金の審査・認定フローは、令和3~4年度にかけて大きく変更されました。

■ 見直し前
[申請]
認定医審査(1次)
職員チェック(2次)
決定
■ 見直し後
[申請]
職員仮認定(1次)
認定医審査(2次)
不一致時は複数認定医
決定
主な変更点のポイント
・審査の主導権が認定医から職員へ移行:職員による仮認定が実質的な基準となり、認定医は確認役に。
・判定基準の標準化:ガイドラインに沿った審査を徹底し、バラつきを減らす。
・再審査プロセスの明確化:仮認定と認定医の判定が異なる場合は、複数の認定医による再審査。
見直し前は、一次審査を認定医が行い、二次審査を職員が担当していました。
認定フローを見直し、「認定医の審査」の前に「職員による仮認定」が設けられました。
認定医よりも前に、日本年金機構の2人の職員が一次審査を行い、認定医は二次審査を担当します。
2. 内部文書で明らかになった「判断誘導」の可能性
障害年金の審査をめぐっては、日本年金機構の職員が判定医に対して、「支給を絞る方向で判断を誘導している可能性がある」ことが、内部文書や職員の証言で明らかになりました。
機構は、首都圏の判定医140人それぞれについて「傾向と対策」のような文書を内部で作成。
「こちら(職員側)であらかじめ(判定を)決めておく」などと記載されています。
医師によって判断にばらつきがあることも認識されており、職員の裁量や、どの判定医に書類が回るかによって、支給の可否や金額が左右される実態が浮き彫りになりました。
3. 報道受け障害年金ひそかに再判定 年金機構、不支給の千件超
日本年金機構が、「障害年金の不支給と判定したうち、千数百件について、内部でひそかに判定をやり直していた」ことが、関係者への取材で明らかになりました。
「通常は再判定しない」異例の措置であり、共同通信が2024年に不支給判定が急増したと報じたことを受けて、障害年金センター長が4月上旬に再判定の方針を表明し、部署ごとに一定数を抽出して再判定が行われました。
機構は取材に対し、「そうした事実はない」と否定していますが、職員からは「機構の回答は虚偽だ」との声も上がっています。
4.障害年金不支給倍増に疑念 福岡大臣「実態調査し公表」
2024年度、障害年金の不支給判定が急増し、前年度の約2倍となったことが報道され、障害者団体や社会から大きな反響が広がっています。
収入の少ない障害者にとって支給可否は死活問題であり、複数の障害者団体が「看過できない」「制度への信頼を大きく揺るがす」など疑念や不安の声明を発表しました。
国会でも取り上げられ、福岡資麿厚生労働大臣は、「実態把握に向けて調査し、1カ月後に結果を公表する」と表明しました。
●参考外部記事
福祉新聞:https://fukushishimbun.com/series06/40534
5. 日本年金機構からの手紙:実際の対応とその評価
日本年金機構徳島北年金事務所から当事務所へ、令和7年5月15日付で以下のような手紙が届きました。
「このたび、当年金事務所の担当職員の認識誤りにより、ファクシミリによる年金相談の対象者が『耳や発声が不自由なため電話による年金相談ができない方』に限定される旨の回答をしてしまったことにつきまして、深くお詫び申し上げます。
身体的および精神的な障害によって、電話連絡ができない方がいらっしゃることを認識し、ファクシミリによる年金相談の丁寧な対応を心掛けます。
今後同じような事態が起きないよう研修を実施し、再発防止に努めてまいります。」
(担当者名・連絡先等の個人情報は、個人情報保護の観点から掲載を控えます)
この手紙は、障害のある方に対する対応に誤りがあったことを認め、謝罪と再発防止を約束する内容です。
しかし、所長本人からの直接的な謝罪や、当事者への丁寧な説明がなかった点は、受け取る側にとっては誠意が十分に伝わらない可能性があります。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する取り組み|日本年金機構
障害者差別解消法に基づく対応要領について
「障害者差別解消法」は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項や、国の行政機関、地方公共団体等及び民間事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置などについて定めることによって、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としています。
対応要領は、日本年金機構職員がその事務または事業を行うに当たり、障害者に対して不当な差別的取扱いをしないこと、また、社会的障壁を取り除くための必要かつ合理的な配慮を行うために必要な考え方などを記載しています。
日本年金機構における障害を理由とする差別解消の推進に関する対応要領(要領第177号)
(監督者の責務)
第5条 監督者は、第2条及び第3条に掲げる事項に関し、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。
(1)日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、役職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。
(2)障害者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申し出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。
(3)合理的配慮の必要性が確認された場合、役職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。
2 監督者は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。
(制裁処分)
第6条 役職員が、障害者に対し不当な差別的取扱いをし、又は過重な負担がないにも関わらず合理的配慮の不提供をした場合であって、その態様等が職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合等に該当する場合は、日本年金機構役員制裁規程(規程第43号)及び日本年金機構職員制裁規程(規程第 40号)に基づき制裁処分に付されることがある。
6.当事者の声を活かした制度へ~「Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きに決めないで)」
障害年金の不支給判定急増や審査体制の見直しをめぐる議論の中で、障害や難病を抱える当事者の視点や声が十分に反映されていない現状は大きな課題です。
「Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きに決めないで)」は、障害者権利条約の根幹をなす理念であり、当事者が政策や制度の決定過程に参画することの重要性を示しています。
障害者団体や当事者からは「判定基準の明確化・透明化」「審査プロセスの見直し」「障害者が参加する制度見直しの場の設置」などが強く求められています。
実際、当事者やその家族、支援者の声が制度設計や運用に活かされることで、より実態に即した公平な制度が実現します。
”当事者らでつくるNPO法人「地域精神保健福祉機構」や「発達障害当事者協会」などは、厚生労働省に要望書を提出し、「障害者が参加した形で制度の見直しを議論する場の設置」などを求めています。”
7.今後の課題と求められる対応
障害年金の不支給判定急増は、審査体制の見直しや職員の裁量拡大、判定医への誘導可能性など、構造的な問題が複合的に絡み合っています。
障害者団体や専門家からは、以下のような対応が求められています。
・判定基準の明確化・透明化:誰が見ても分かる基準とプロセスの透明化。
・審査プロセスの見直し:障害者や支援者が参加する制度見直しの場の設置。
・客観性・公平性の確保:職員の裁量が入り込まない仕組みの構築。
・当事者参画の促進:「Nothing about us without us」の理念に基づき、障害や難病を抱える当事者が制度設計や運用に積極的に関わる仕組みの導入。
厚生労働省も、2025年5月に国会で「不支給と見込まれた事案について、より丁寧な審査を行った」と説明し、再判定していたことを事実上認めています。
8.事務所の理念と活動内容
私たちライトハウス社会保険労務士事務所 徳島障害年金サポートセンターは、「共生の社会を目指し、すべての人が尊重される環境づくり」を理念に掲げています。
地域社会と共に歩みながら、多様性を尊重し、誰もが安心して働き、生活できる社会の実現を支援します。
人にやさしい街づくりを推進し、誠実で温かいサービスを提供することで、社員や顧客の幸せを第一に考えています。
また、地域社会との連携を大切にし、持続可能な社会づくりに貢献していくことをお約束します。
障害年金の制度や審査体制の課題を通じて、私たちは常に当事者の声に耳を傾け、共に歩み続けます。
今後も、誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指して、全力でサポートして参る所存です。
9.まとめ
障害年金の不支給急増は、単なる審査基準の厳格化にとどまらず、制度運営そのものへの信頼が問われる大きな問題となっています。
今後は、審査基準の明確化やプロセスの透明化、障害者や関係者の声を反映した制度見直しが不可欠です。
「Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きに決めないで)」の理念を実現し、障害や難病を抱える当事者が安心して社会に参加し、必要な支援を受けられる共生社会の実現を目指すことが求められています。
参考文献・情報
・障害者権利条約における「私たち抜きに私たちのことを決めるな」の意味
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1295929.htm
・「Nothing about us, Without us!」( 私たちのことを私たち抜きで決めないで!)
https://note.com/super_camel463/n/n414e6d8e2776
ライトハウス社会保険労務士事務所 徳島障害年金サポートセンター
https://lighthouse-sharoshi.com
最後になりますが、
私は、「県庁時代における障害福祉業務に従事した経験、また我が子のために障害者団体の役員に従事した体験」から、
私と同じく、障害や難病を抱えるみなさん、あるいは、かつての私と同様に、障害を抱える子供さんをお持ちの、お父さんお母さんのお力になれればと存じます。
また、私は、「仕事や家庭等を失っても、また社会復帰することができること」、あるいは、「難病や障害を抱えていても、こうして働くことができること」を、
自分自身の姿を見せることで理解していただき、現在、障害や難病でお悩みのみなさんにも、どうか諦めずに頑張っていただければと存じます。
以上、『「障害年金の不支給急増と審査体制の変遷~当事者の声を活かした制度へ」~ここが肝心!🙋~』ついてでした。🙇
それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋
