特別編

『障害年金「不支給」急増の背景と、現場からの改善提言
~誰も取り残さない審査・支援体制を目指して
ここが肝心!🙋~』

みなさん、こんにちは。

私は、徳島障害年金サポートセンターで障害年金サポーターをしている、楠 昇と申します。

「自らが病気で障害年金をもらった社労士が、あなたの障害年金のお悩みを解決」をうたい文句とし、本業の障害年金専門社労士として、またNPO法人の代表として、現在、活動中です。

あらためて、みなさん、こんにちは。

徳島障害年金サポートセンターの楠 昇です。



前回は、「徳島県の障害年金「認定率の変遷」から考える――支援と両立、その現場のリアルと課題」~ここが肝心!🙋~』について、お伝えしました。



今回は、『障害年金「不支給」急増の背景と、現場からの改善提言~誰も取り残さない審査・支援体制を目指してここが肝心!🙋~』について、お伝えいたします。

1. 現場で起きている混乱――“入れ食い”から激変の時代へ

令和7年現在、障害年金――とりわけ精神障害分野で「不支給」「不認定」が急増し、申請現場では混乱と不信感が広がっています。

一方で、かつて徳島県は「診断書さえ提出すれば必ず通る」時代があり、平成24年度には認定率100%、不支給ゼロ、いわば「入れ食い」の状況でした。


「昔は良かった」と懐かしむ医療関係者もいまだ多い。

しかし平成29年度(2017年)の「東京一元化」以降は全国審査が統一され、「なぜ不支給なのか分からない」「同じ診断書でも通らなくなった」と、現場では戸惑いと苛立ちが日常となりつつあります。

2. 医師・精神保健福祉士・社労士――現場協働のすれ違いと責任

多職種協働がますます重要になるなか、専門家が「自分自身が納得できていないまま依頼者(患者)に説明する」“責任の放棄”が蔓延することへの強い危機感が現場にはあります。



● 医師とのやりとり――診断書作成への自信と基準意識

私はある精神科医にこう伝えました。

「私はこれまで一度も認定を落としたことがありません。先生の診断書は認定基準・認定要領の2級基準を十分に満たしています。『2級でも3級でもいい』というあいまいな姿勢ではなく、内容に自信を持ってください。」

これに驚かれる医師も多く、自らの診断書が「どの程度に該当するか分からない」「とにかく通ればよい」といった雰囲気が形成されている現状が浮き彫りになります。

“納得できていない意見や根拠を、患者本人にそのまま伝えても、説得力はありません”――これは医師だけでなく、すべての支援職に当てはまります。



● 精神保健福祉士とのトラブル――誤った情報による申請阻害

申請準備の場面では、重大な事例も発生。

「通院と入院をあわせて19病院分の履歴がいる」と精神保健福祉士が患者に説明。

しかし、実際には緊急入院以外は4つの病院の通院のみで、紹介状等による移動まで履歴として誤ってカウントされていました。

「それだけ必要なら無理」と言われ、患者は「どうすることもできない」とパニック状態に。

社労士である私の説明も届かず、手続き自体が止まってしまう結果となりました。



私は精神保健福祉士にこう訴えました。

「患者を支援すべき立場が、誤った知識で逆に混乱や制度利用の断念を招くなんて本末転倒です。自分で解決できず事態をさらに悪化させるのは職業人としてナンセンス。申請を妨害してしまうのは、精神保健福祉士法第2条の本旨にも反します」

加えて、精神保健福祉士協会本部に「このような対応は法の趣旨から逸脱していないか」と直接確認も行いました。



● 手数料や責任、有資格専門職の“安易な説明”が与えるリスク

「診断書を年金事務所に提出しても受理されなかったら、手数料(3300円)はどうする?社労士が責任をとるのか?」



――こうした言葉が現場で飛び交うこともあります。

しかし診断書作成は医師の義務(医師法)であり、出すか出さないか、万が一の手続きリスク説明は患者や社労士の役割。

立場を曖昧にした説明や「自分には分からないから他人のせいにする」対応は決して認められるものではありません。

3. なぜ、“理解できていないままの説明”が危険なのか?

障害年金申請の現場では、次のような事態が深刻なリスクを生みます。



①自分が納得できていない説明は、患者をさらに不安・不信にさせる

専門職が「医師にそう言われたから」「年金事務所がそうだと答えたから」と、自分自身が得心できないまま患者に伝えても、説得力を持ちません。

それでは患者の信頼も得られず、むしろ迷いと混乱が広がります。



②契約や手数料を受けている社労士が根拠なきまま案内すれば、“責任放棄”と批判されても仕方ない

資格者が中途半端・無責任な仕事を提供するのは、その資格自体への冒涜とも言えます。



③“一度いい加減な申請”をすると、証拠書類として残り、将来の変更を自ら困難にする大リスク

過去に内容の薄い・事実と違う申請書を出してしまうと、その内容がずっと保険者側ファイルに残り、「以前こう申請したのだから矛盾していませんか?」と問われる恐れがあります。

これは審査請求や再申請の際に主張を変えられず、本人に極めて不利な証拠となる場合さえあります。



④“障害年金を理解していない者が無責任なことをすれば、その資格に対する冒涜である”

社労士にしろ精神保健福祉士にしろ、専門家を名乗る以上、「分からないまま・自信なしに安易な説明」や「根拠なき対応」は絶対に避けなければなりません。

4. “不支給”と“混乱”を生みやすい審査新時代の構造

・医師の診断書は“生活実態”や日常の困難さが過小評価されがち

・極端で形式的な「就労歴=障害軽度」判定

・不支給理由がシンプルすぎる(具体的なフィードバックがなく、次への改善ができない)

5. 支援現場の工夫――本当の“伝える力”と誠実な協働の実践

・生活実態の補足説明――事実と根拠をきちんと伝える

・面談・ヒアリング等では「どんな支援がどれほど必要か」「できていたことが今どうか」を具体例・実数で

・家族や支援者、現場の第三者証言も最大限活用

・申請書は“自信と根拠をもって”記載し、曖昧なまま提出しない

・必要なら多職種意見書・記録書の添付、意見調整も厭わない

6. 制度改善への現場発の提言

・不支給理由を具体的に伝えるよう制度改正を要望

・審査体制に精神保健福祉士など支援職参画の合議制

・診断書・申請書ガイドラインの周知と現場へのフィードバック強化

・患者・家族も審査に説明できる参加型の審査運用へ

7. おわりに――「誠実な支援」「本物の納得」が本当の安心を生む

障害年金は、生活が困難な方の命綱です。

医師も、精神保健福祉士も、社労士も――自分自身が納得できていない説明や、中途半端な根拠で申請を進めてはいけません。

“一度出した情報が将来にわたり本人を縛ってしまう”こと、安易な説明や提出は“制度の信用・自分の資格への冒涜”となる危険すらあること。

この点を、私たちは今一度徹底して意識したいものです。




制度運用の厳格化で、現場にプレッシャーがかかる時代だからこそ、

「自分で納得し、プロとしての根拠を持って患者・家族と向き合う」――

その誠実さと責任感が、申請者の安心・社会的信頼へと必ずつながっていくはずです。




徳島障害年金サポートセンターは、経験・専門性・法的根拠に基づいた最善のサポートを、患者さん・ご家族・医師・支援職の皆さんと一緒に模索し続けてまいります。

困った時・迷った時にはぜひご相談ください。

「現場や当事者のリアルな声」こそが、未来の制度改善の礎となります。

最後になりますが、

私は、「県庁時代における障害福祉業務に従事した経験、また我が子のために障害者団体の役員に従事した体験」から、

私と同じく、障害や難病を抱えるみなさん、あるいは、かつての私と同様に、障害を抱える子供さんをお持ちの、お父さんお母さんのお力になれればと存じます。



また、私は、「仕事や家庭等を失っても、また社会復帰することができること」、あるいは、「難病や障害を抱えていても、こうして働くことができること」を、

自分自身の姿を見せることで理解していただき、現在、障害や難病でお悩みのみなさんにも、どうか諦めずに頑張っていただければと存じます。

以上、『障害年金「不支給」急増の背景と、現場からの改善提言~誰も取り残さない審査・支援体制を目指してここが肝心!🙋~』についてでした。🙇

それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋

一人で抱え込まず、専門家や支援者と一緒に進めること
~成功の可能性が大きく高まります~
2025年8月9日