特別編

『命と支援の壁を超えて ― 契約解除と一通の手紙がくれた再出発の力
~ここが肝心!🙋~』

みなさん、こんにちは。

私は、徳島障害年金サポートセンターで障害年金サポーターをしている、楠 昇と申します。

「自らが病気で障害年金をもらった社労士が、あなたの障害年金のお悩みを解決」をうたい文句とし、本業の障害年金専門社労士として、またNPO法人の代表として、現在、活動中です。

あらためて、みなさん、こんにちは。

徳島障害年金サポートセンターの楠 昇です。



前回は、『障害年金「不支給」急増の背景と、現場からの改善提言~誰も取り残さない審査・支援体制を目指してここが肝心!🙋~』について、お伝えしました。



今回は、『命と支援の壁を超えて ― 契約解除と一通の手紙がくれた再出発の力~ここが肝心!🙋~』について、お伝えいたします。

1.問題勃発と病状悪化から廃業の危機

令和7年の夏、私は支援者であり、同時に病気や障害を抱える当事者として、障害年金申請の現場でかつてない試練に直面しました。

依頼者と頻繁に連絡を取りながら進めていた事後重症の請求手続きが、日本郵便株式会社のレターパックプラスの「1週間不在扱い」により、依頼者に渡らず返送されてしまったのです。(※詳細は欄外「NPO法人しおん」のブログに記載)



結果として、本来なら余裕を持って間に合うはずだった6月申請ができず、1か月遅れでの支給となり、認定されれば、次のような大きな損失が生じることとなります。

・障害基礎年金1級 約9万円

・小学生2名分の加算額 約2万円×2人分

合計で約13万円の月額減収です。



この依頼者は視覚障害があり車の運転ができません。

それでも、不在とされた1週間も毎日、障害のあるお子さんを特別支援学校まで送迎していました。

担任教師もその事実を確認し日誌に記録、さらに校長先生が「不在とされた1週間、送迎していたことの証明書」を発行されています。

加えて、その不在期間中にも、依頼者は別のレターパックプラスで診断書を送付しています。



しかしこれらの事実に対して、日本郵便株式会社は徳島中央郵便局の管理職が「何もお答えすることはありません」、本社は「電話をおつなぎできません」と回答。

郵便事業を所管する総務省担当課へ一連の書類を送り、事実確認を求めても、2週間経っても返答はありませんでした。



視覚障害の悪化により車の運転ができなくなり、失業した母子家庭の母親。

失業保険の期限が迫る中、必死の思いで当事務所へ障害年金の申請を依頼されました。

小学生2人を育てる母子家庭にとって、月13万円の減収は計り知れない打撃です。



ショックから血圧が上がったからなのか、お母さんは高熱が10日以上続き、それでも食事の支度をしようとした際に転倒し頭部を負傷、救急搬送され5針を縫う大怪我となりました。

脳動脈瘤を原因とする視覚障害であることから、頭部を強打することは命に関わる危険もありました。

その後も高熱が続くと聞き、また、この夏の異常な高温に対して対応できているのかと気になり、私は深夜に#819へ緊急連絡し、徳島県庁へ事情を説明して母子の安全確保を求めました。

徳島県庁では深夜対応の職員さん、翌日の日曜日の対応の職員さんが迅速に動いてくださり、私にも母子3人の安否確認の連絡をくださいました。



私はこれまで、「速達扱い・手渡し・受領印」を謳うレターパックプラスを信じ、昨年9月の値上げ前は月に約100部を購入し、返送分も当方負担としていました。

値上げ後は1部600円もすることから、事務所経費の調整を余儀なくされ、「報酬単価を上げるよりも、事務所への返送分を依頼者負担に切り替えることとし」、自社負担分を月40~60部購入していました。



しかしながら、当社の負担を減らした分は、依頼者が負担することとなります。

就労できなく、日常生活でも支障がある方にとって、1部600円×必要部数の出費は大変なことです。

それでも、私を含め、依頼者の方々も、「レターパックプラスであれば、診断書など重要書類を安全かつ迅速に届けられる」ものと信じていたため、今回の事態は全く予想外でした。



私は元々、難病や障害を抱えており、心不全の発症や心臓弁膜症の手術検討、連日の検査で心身ともに限界に近い状態でした。

ある日から3日ほど、起き上がれず、食事も睡眠も取れない日が続く中、別件の依頼者の書類作成を進めていました。

が、進めていく過程で予期せぬことが発覚して、申請は不可能であると判明したことから、やむなく契約解除に至りました。



契約時にお預かりしていた事務手数料22,000円も返金できず、「力不足で申し訳ない」という思いが募りました。

郵便局との一連の対応も重なり、世の中を信じられなくなり、「廃業」の二文字が頭をよぎりました。

2. 深夜に届いた一通の手紙

そんな時、契約解除に関する書類一式とともに、封筒の中に下記の一通の手紙が入っていました。

深夜、それを読んだ瞬間、涙がこぼれ落ちました。

※お手紙(原文)

※お手紙の内容

拝啓 時下益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。

さて、この度、契約解除の運びとなりましたこと、誠に残念に存じます。

先生には一方ならぬお世話になり、感謝の言葉が見つからない程でございます。

この秋、大きな手術をなさる由、成功されますことを心よりお祈り申し上げます。

先生におかれましては、障害に屈することなく、より多くのご依頼人のお力になられるよう、心よりお願い申し上げます。

酷暑の中、お体だけにはご留意くださいますよう念じております。

敬具

3. 諦めない力をくれた言葉

この手紙は、後日、事務所の相談室の壁に掲示し、今も目に入るたび「諦めてたまるものか!」という気持ちを新たにしてくれます。

申請という成果が出なかったにも関わらず、「他の障害者のためにも頑張ってほしい」と励ましてくださる――その**“つながり”**こそが、私の復活への原動力になりました。

4. 制度の壁と現場の現実

この出来事を通して、改めて見えてきた現実があります。

・障害年金申請の現場では、当事者も支援者も、自身の病気や生活困難を抱えながら活動している

・成否だけが評価されやすく、そこに至る努力や支える力は見落とされがち

・書面や制度だけでは伝えきれない“生きた生活”の存在

ほんの小さな配慮の有無で、障害者の生活や社会復帰が大きく左右される

5. ここが肝心!🙋

障害年金の支援とは、単なる制度説明や書類作成のことではありません。

それは人と人のつながりを紡ぎ、時に命を支える行為です。

・結果が出なかったとしても、**「頑張ってくれてありがとう」**という一言が、生きる力を取り戻してくれる

・支援は数字では測れない価値がある

障害者差別解消法の趣旨(欄外下記)にあるように、ほんの小さな配慮が、障害者の社会復帰を大きく後押しする

「障害者差別解消法」の趣旨

第一条(目的) この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。

第四条(国民の責務)
国民は、第一条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。

これらが示すとおり、一人ひとりの配慮と合理的対応が、障害者の社会復帰を後押しする力になります。

6. 支えてくださった皆様へ ― 感謝の言葉

今回、私は多くの方々の声と支えに救われました。

苦しい時にそっと寄り添ってくださり、その存在が私を再び立たせてくれました。

本当に、心からありがとうございます。

この仕事を通して、障害者同士が支え合い、励まし合える社会を願っています。

そして、制度や社会の壁を少しずつ取り払い、**「誰も取り残さない支援」**をこれからも伝えていきます。

7. 障害者の生活や命を守る現場から――

この一通の手紙と共に、私はこれからも歩み続けます。

最後になりますが、

私は、「県庁時代における障害福祉業務に従事した経験、また我が子のために障害者団体の役員に従事した体験」から、

私と同じく、障害や難病を抱えるみなさん、あるいは、かつての私と同様に、障害を抱える子供さんをお持ちの、お父さんお母さんのお力になれればと存じます。



また、私は、「仕事や家庭等を失っても、また社会復帰することができること」、あるいは、「難病や障害を抱えていても、こうして働くことができること」を、

自分自身の姿を見せることで理解していただき、現在、障害や難病でお悩みのみなさんにも、どうか諦めずに頑張っていただければと存じます。

以上、『命と支援の壁を超えて ― 契約解除と一通の手紙がくれた再出発の力~ここが肝心!🙋~』についてでした。🙇

それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋

2025年8月18日