『「障害年金×長期うつ病」本当の審査現場と認定基準 ~“書類のやりとり”で見落とされるリアル~ここが肝心!🙋』
~『世界メンタルヘルスデー』にちなんで~みなさん、こんにちは。
徳島障害年金サポートセンターで障害年金サポーターを務めております、楠 昇(くすのき のぼる)と申します。
「自らが病気で障害年金を受給した社労士が、あなたの障害年金のお悩みを解決」――この言葉を信条に、障害年金専門の社会保険労務士として、またNPO法人の代表として、日々活動を続けています。
あらためまして、みなさん、こんにちは。
徳島障害年金サポートセンターの楠 昇です。
前回は『地方から「障害年金申請・審査請求」の現実を告発します ~意見陳述の大切さ、そしてあまりに重い経済負担の現実~ここが肝心!🙋』についてお伝えしました。
今回は、『障害年金×長期うつ病 ―本当の審査現場と認定基準― “書類のやりとり”で見落とされるリアル ここが肝心!🙋』をテーマにお届けします。
ちょうど今月10月10日は「世界メンタルヘルスデー」でした。
世界メンタルヘルスデー(World Mental Health Day)は、1992年に世界精神保健連盟(WFMH)が提唱した国際的な記念日であり、毎年10月10日に心の健康について社会全体で考え、理解と支援の輪を広げることを目的にしています。
WHO(世界保健機関)も協賛しており、国内外でさまざまな啓発イベントや講演が行われ、「心の病や悩みは、特別な人だけでなく誰もが向き合うべき課題」という認識の普及につながっています。
※『NPO法人しおん』ブログ~『世界メンタルヘルスデーに寄せて——心でつながる希望を』
メンタルヘルスは、すべての人にとって大切な健康のひとつです。
心の不調やうつ病に悩む方が孤立せず、身近な人同士が支え合える社会づくり――
そして、制度面でも正しい理解と合理的配慮が広がることこそ、困難と向き合う方の再生と安心に直結します。
今回のブログも、世界メンタルヘルスデーにちなんで、「障害年金×長期うつ病」の現場の課題、申請・審査・認定基準のリアルについて、最新テーマをお伝えします。
1.【はじめに】障害年金と長期うつ病の“現場ギャップ”
うつ病は「一時的な不調」だけではなく、数年から数十年もの間、治療を要する慢性・重症タイプ(大うつ病、反復性うつ病など)が少なくありません。
しかし、現場の審査では「現在休職中なら回復見込みあり」「在職なら就労可」といった形式的な判断にとどまり、認定基準の本質が見逃されがちなのが実情です。
2.【認定基準とは】2025年改正のポイント
うつ病などの精神障害における障害年金の認定は、次の要素を総合的に見て判断されます。
・日常生活の自立度(身辺維持、服薬や金銭管理、対人関係の困難さなど)
・労働能力の有無や制限の程度
・症状の持続性、病状経過
主な認定基準は以下のとおりです。
・1級:身の回りのことがほとんどできず、ほぼ全介助が必要。
・2級:「日常生活に著しい制限」があり、家事や外出、簡単な買い物も一人では困難。家族などの支援が日常的に必要。
・3級:労働に著しい制限がある、または制限が必要。日常生活は一定範囲で可能。
令和4年改正ガイドライン以降、「日常生活能力の程度」が点数化され、「実際の生活困難さ」「家族の援助」「長期経過」などを加味して等級が決定されるようになりました。
3.【ケース紹介】~“書類のやりとり”と切実な日常~
ある方の事例を要約します。
平成3年:勤務先倒産、徳島へ移住。妻と重度発達障害のある娘を支えながら生活。
平成19年:うつ病発症。その後、仕事と介護の両立に疲弊。
平成23年以降:症状悪化。休職と復職を繰り返す。
令和7年4月:診断書で2級相当の所見にもかかわらず、障害厚生年金は3級認定。
令和7年6月:不服申立(審査請求)。その後、就労困難に。家計は月5万円のみで破綻寸前。
令和7年9月:職場から退職勧告。審査請求棄却。
4.審査過程で感じた「深い疑問」
審査請求から再審査にかけて強く感じたのは、「質問状→意見書→再質問状→再意見書」が繰り返される構造的問題でした。
本来、証拠と主張が出そろった時点で審査官は認定基準に基づき判断すべきです。
しかし、『書類のやりとりが延々と続き、申請者や家族はそのたびに精神的・身体的に疲弊』しています。
重症うつ病や家族介護を抱える人々が、『書類対応だけで追い詰められている現実』を、私は強く伝えたいと感じています。
5.“大うつ病”の医学的現実と認定のギャップ
DSM-5(※1)や国内治療ガイドラインでも、大うつ病や長期・慢性型うつ病は、
・長期間(数年~数十年)にわたり持続
・再発・重症化しやすい
・自律神経・免疫機能への影響、合併症リスクあり
・家族や医療支援が常に必要
と位置づけられています。
※1 DSM-5について(日本神経学会サイトへ)
それにもかかわらず、日本の審査現場では「在職なら3級」と即断され、家族支援や長期経過が評価されにくい実態があります。
【POINT】
2級は「日常生活に著しい制限」がある場合。慢性・反復型で社会復帰が困難な例こそ、本来2級に該当すべきです。
6.【現場でできること】“伝わる書類”作成の工夫
・診断書:入浴、服薬、金銭管理、外出など、日常生活の具体的状況を詳しく記載してもらう。
・家族・支援者申立書:介助の実際や負担を、日常のエピソードで具体的に。
・審査請求時の申立:「質問状の繰り返し」に対し、合理的配慮の観点から「精神・身体的負担のため追加対応困難」と明記することも重要です。
7.まとめとメッセージ ~“書類の先”にある人生へ~
障害年金の申請や審査請求は、単なる制度上の手続きではなく、一人ひとりの「生活」と「命の支え」です。
私は、「現場の声を伝え続けること」「合理的配慮を求めること」が、社会全体の改善につながると信じています。
今回の経験が、正しい認定基準に基づく本来の支援へと結びつき、苦しむ方々の力になれば幸いです。
何度でもお伝えします――
「一人で抱え込まず、制度と現場の“壁”を共に乗り越えていきましょう。」
最後に、私は県庁での障害福祉業務や、障害児の親として活動してきた経験から、
「病気や障害があっても、再び社会で活躍できる」ことを、自らの生き方で伝えていきたいと考えています。
たとえ多くを失っても、人は再び立ち上がることができます。
何もしなければ失敗もありませんが、成功もありません。
私の経験が、今悩みながらも挑戦し続ける皆さんの一歩につながれば幸いです。
以上、『「障害年金×長期うつ病」本当の審査現場と認定基準 ~“書類のやりとり”で見落とされるリアル~ここが肝心!🙋』」について、お話ししました。🙇
それではみなさま、来週また月曜日にお会いしましょう。🙋
