障害年金の診断書について

診断書は障害年金申請の最重要書類


障害年金は書類審査のみで支給・不支給が決まります。

特に重要な書類とされている診断書の内容は、審査の結果を左右するほど大変重要なものです。

主治医に依頼し、適切な内容の診断書を作成してもらうことが必要です。

ただし、診断書を作成してもらうために、注意するポイントがあります。


1.診断書について押さえておくべき3つの注意する点


障害年金の申請に使用する診断書について、押さえておくべき注意する点は次の3つです。

1.年金事務所に相談してから主治医へ作成を依頼する

2.診断書の種類、提出枚数と有効期限を押さえる

3.診断書を受け取ったら必ず点検する


では、それぞれ詳しく説明いたします。


1-1.年金事務所に相談してからお医者さんへ作成を依頼する

診断書の作成をお医者さんに依頼する前に、年金事務所へ相談に行くようにしましょう。

それは、障害年金の受給要件を満たしているかどうか、確認してもらうためです。

受給要件を満たしていなければ、障害年金は受給できません。



障害年金の受給要件とは次の3つです。

1.初診日に原則として公的年金に加入していること。

2.初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの期間において、3分の2以上保険料を納付または免除されていること。

または初診日が令和8年4月1日前にある場合については、初診日において65歳未満であり、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの一年間に保険料の未納がないこと。

3.障害認定日に障害年金を受給できる障害の程度(障害等級)に該当すること。



このうち、1と2については年金事務所で調べてもらえます。

※3の障害等級については、障害年金の請求後に審査の上、決定されます。



また、使用する診断書の種類や、診断書に記載するべき日付などの情報も、年金事務所へ相談に行くと教えてもらえます。


1-2.診断書の種類、提出枚数と有効期限を押さえる

障害年金の診断書様式は障害の部位によって異なります。

具体的には次の8種類の様式があります。


様式第120号の1 眼の障害用

様式第120号の2 聴覚、鼻腔機能、平衡機能、そしゃく・嚥下機能、音声又は言語機能の障害用

様式第120号の3 肢体の障害用

様式第120号の4 精神の障害用

様式第120号の5 呼吸器疾患の障害用

様式第120号の6-(1) 循環器疾患の障害用

様式第120号の6-(2) 腎疾患・肝疾患、糖尿病の障害用

様式第120号の7 血液・造血器、その他の障害用


通常1つの傷病の場合、上記の診断書様式のうち、いずれか一種類を使用することになります。



しかし、障害が必ずしも1つとは限りません。1つの傷病で複数の障害がある場合は、それぞれの障害状態が的確に表現できる様式の診断書を準備する必要があります。

たとえば、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)により片麻痺と高次脳機能障害が併存するような場合には、「様式第120号の3 肢体の障害用」と「様式第120号の4 精神の障害用」の2つの診断書を準備する必要があるわけです。



また、肺がんの脳転移により歩行障害が顕著なケースを考えます。

この症例では「様式第120号の5 呼吸器疾患の障害用」や「様式第120号の7 血液・造血器、その他の障害用」ではなく、「様式第120号の3 肢体の障害用」の診断書様式を選択した方が良い場合もあります。



このように、8種類の診断書のうち選ぶ診断書によっては、障害等級や年金額にも影響を及ぼす場合もあるため、慎重に検討する必要があるのです。


なお、診断書の提出枚数や提出期限は、障害年金の請求方法によって異なります。

障害年金の請求方法には以下の3種類があります。

1.認定日請求

2.遡及請求

3.事後重症請求


以下に、診断書の提出枚数と有効期限について、請求方法ごとに説明いたします。


1-2-1.認定日請求

認定日請求を行う場合、診断書の提出枚数は1枚です。

障害認定日より3ヶ月以内の現症の診断書が必要となります。



また、診断書の有効期限は障害認定日から1年未満です。

例えば3月15日が障害認定日の場合、6月14日までの現症の診断書を作成してもらう必要があります。


なお、翌年の3月14日までが診断書の有効期限です。

診断書の作成日ではなく、障害認定日から1年未満であることに注意をすることにしましょう。


1-2-2.遡及請求

遡及請求を行う場合、診断書の提出枚数は原則2枚です。


1枚は障害認定日より3ヶ月以内の現症の診断書、もう1枚は直近に作成してもらった診断書が必要となります。

遡及請求は、障害認定日より1年以上経過してから、過去の分まで遡って障害年金を請求する方法です。

そのため、障害認定日時点の診断書と直近の診断書の2枚が、原則必要になるのです。




また、障害認定日の時点で作成してもらった診断書には、有効期限は設けられていません。

一方、直近に作成してもらう診断書は現症日より3ヶ月以内が有効期限となります。

たとえば3月15日が診断書の現症日ならば6月14日が有効期限です。




なお、現症日とは、診断書の症状がいつの状態であるかを示すものです。

現症日は診断書の以下の部分に記載されます。


ここでは、診断書の作成日と現症日は非常に混同しやすいため注意が必要です。


1-2-3.事後重症請求

事後重症請求を行う場合、診断書の提出枚数は1枚です。

直近に作成してもらった診断書が必要となります。

事後重症請求は請求の時点から、障害年金の受給を求める方法です。


遡及請求と異なり過去にさかのぼる請求方法ではないため、直近の診断書のみで請求が行えます。


診断書の有効期限は現症日より3ヶ月以内です。

こちらも診断書の現症日と作成日を混同しないように注意が必要です。


1-2-4.診断書の有効期限のまとめ

障害年金請求における必要な診断書の有効期限を、次の表にまとめてみました。
 

請求方法障害認定日時点の診断書の有効期限直近の診断書の有効期限
認定日請求障害認定日から1年未満-
遡及請求有効期限なし現症日から3ヶ月間
事後重症請求- 現症日から3ヶ月間

1-3.診断書を受け取ったら必ず内容を確認する


お医者さんから診断書を受け取ったら、誤りがないか、必ず内容を確認しましょう。


ご自身で点検せずに、そのまま診断書を提出すると差し戻しになったり、後々不支給につながったりするケースもあるため、念入りに確認することが必要です。




診断書を確認するポイントは、次のとおりです。

1.現況と診断書の内容が違っていないかか?

2.記入漏れはないか?


3.診断書以外の書類は揃っているのか?


また、病院から受け取った診断書には封がしてあるため、「開封して中を確認しても良いのか?」と心配される方がおられますが、特段、封を切っても何ら問題はありません。


なお、診断書は確認するだけでなく、必ずコピーも取っておき、後日にまた提出した内容が確認できるようにいたしましょう。

1-3-1.実際の症状と診断書の内容が違っていないないか?

実際の症状と診断書の内容が違っていないか、必ず確認しましょう。


体調が良くなっていないのに、診断書には「症状が軽くなっている」と書かれてしまうケースでは、不支給につながる可能性が高まるため、特に注意が必要です。

たとえば、体調が悪いのに主治医を前にするとうまく伝えられず、「体調が良くなっています」と答えてしまうことがあります。


また、具合の良い日を選んで受診したため、その他、特に女性の場合には診察日にきれいな服装を選んでいくことで、主治医からみて「症状が軽くなっている」と判断されることもあります。



短い診察時間のみで、症状や生活状況を主治医に正しく把握してもらうのはなかなか難しいものです。

実際の症状や生活の様子を正確に伝えるためには、現況をメモにまとめて主治医にお渡しするのがお勧めです。

それでも実際の症状と診断書の内容に相違がある場合は、主治医にあらためて相談するようにしましょう。

1-3-2.記入漏れはないか?

診断書に記入漏れがないか、確認しましょう。


記入が必須の事項を空欄のままにして提出すると、窓口で差し戻されます。


また、記入が必須とされていない事項が空欄になっている場合にも、また注意が必要です。



たとえば、就労状況の欄は記入必須ではないものの、「職場から特別な配慮」を受けて就労している場合には、その旨を記載する必要があります。


この場合、記載する必要があるのにもかかわらず、もし就労状況の欄が空欄になっている場合には、「問題なく就労できているもの」として障害等級が実際より低く認定されたり、最悪の場合、不支給になってしまったりする可能性があり、この点、特に注意が必要です。

1-3-3.診断書以外の書類の添付漏れはないか?

診断書とあわせて、レントゲンフィルムや心電図のコピーの提出が必要な場合があります。

下記にレントゲンフィルムや心電図のコピーの提出が必要な場合を例示します。


・呼吸器疾患の障害用の診断書様式
傷病名が「結核」「肺化のう症」「じん肺」などの場合・・・胸部X線フィルムの添付が必要(CDなどで保管されている場合は画像をあらかじめ印刷したものを添付)。

・循環器疾患の障害用の診断書様式
心電図所見がある場合・・・心電図のコピーの添付が必要。

上記に該当する場合、書類の添付漏れがないかどうかも、合わせて確認すると良いでしょう。


2.診断書の様式一覧

診断書の様式は日本年金機構のWebサイトよりダウンロードできます。
年金請求に使用する診断書・関連書類

こちらのページを利用すれば、自宅でも診断書の用紙を印刷することができます。

年金事務所から診断書を受け取ったものの、その後、紛失してしまったといった場合に、利用されると良いでしょう。


また、前述のとおり、主治医へ診断書の作成を依頼する前に、必ず年金事務所へ行き、「自分が年金の受給要件を満たしているかどうか」について確認するようにしましょう。

診断書の作成を依頼した際の費用は1通5,000〜10,000円と高額です。

あとから受給要件を満たしていないことが判明した場合、申請自体ができなくなることで、診断書の費用が無駄になってしまうからです。


3.ご自分で手続きを行うことが難しいと悩むあなたへ


障害年金の請求において、診断書は大変重要な書類であることを理解していただけたかと思います。

そのため、注意すべき点もたくさんあります。

特に、主治医とはしっかりコミュニケーションを取り、自分の生活状況や症状についてしっかり共有する必要があります。




しかし、実際には主治医になかなかうまく伝えられず悩まれる方も多くいらっしゃいます。

そのような場合には、障害年金の専門家へ依頼することもできます。

障害年金の専門家に依頼すれば、障害年金の申請全般にわたって、手続きをしてもらえます。




もちろん診断書を主治医へ依頼する際にも、必要なサポートが受けられます。

そのために、費用はかかりますが、申請手続きにおけるご自身の負担を軽減し、障害年金受給の可能性を高めることができるのです


4.まとめ

障害年金の請求に必要な診断書の、押さえておくべき注意する点について、ご説明いたします。

注意する点は次の3つです。


1.年金事務所に相談してから、主治医へ作成を依頼する


2.診断書の提出枚数と有効期限を押さえる


3.診断書を受け取ったら必ず確認を検する


診断書は障害年金を請求するうえで最も重要な書類です。


同じ障害の状態の人が2人いたとしても、診断書の内容によっては「審査の結果が異なるものになる可能性」があります。

そのため診断書の内容をきちんと確認する必要があるのですが、体調が良くない状態で手続きを進めなければならないため、困難な場合が多いのが実情です。

もしも、ご自分で手続きすることが難しいと感じる場合には、障害年金の専門家に依頼することをお勧めいたします。

2024/4/25