診断書や申立書の「日常生活能力」について

診断書や申立書の「日常生活能力」とは?


「日常生活能力」は「医師の診断書」と「病歴・就労状況等申立書」の内容で決まる

障害年金の等級審査は、請求者の方の障害の状態と「日常生活能力」(1級2級の場合)、または「労働能力」(3級)によって決まります。

障害年金の等級審査に重要な影響を与える「日常生活能力」は、「医師が作成した診断書」の記載内容、及び請求者が作成した「病歴・就労状況等申立書」中の日常生活状況の申立内容で決まります。


審査においては「医師の診断書」の記載内容の方が重要で、本人が作成する「病歴・就労状況等申立書」の記載内容は参考資料という位置づけとなっています。


「日常生活能力」の判定が何故重要かというと、障害認定基準において障害年金の1級は「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」、同じく2級は「日常生活の著しい制限を受けるか又は著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と定義されているからです。


障害年金の等級審査は、請求者の方の障害の状態と「日常生活能力」(1級2級の場合)、または「労働能力」(3級)によって決まります。

診断書によって異なる「日常生活能力」の記載

障害年金の等級審査における「日常生活能力」の判定は、「医師が作成する診断書」によるのが原則です。

障害の種類によって障害年金の請求書で使う診断書は8種類に分類されていますが、その診断書ごとに医師が記入すべき「日常生活能力」に関する内容は違います。


「精神の障害用の診断書」以外は、他の障害用の診断書は、「現症時の日常生活活動能力及び労働能力」について「医師の所見を記入する欄」と「一般状態区分について選択する欄」が設けられているだけです。


「医師の所見を記入する欄」には、例えば、次のように記入します。


・人工透析に多くの時間を要し、日常生活及び労働に著しい支障がある
・合併症のため、日常生活に支障がある


労働に制限があると記載されていれば3級相当、日常生活に著しい支障があると記載されていれば2級相当、日常生活が1人ではできないと記載されていれば1級相当です。

「一般状態区分について選択する欄」は以下の(ア)〜(オ)までの段階について、医師が診察の結果請求人が該当すると思われる箇所に〇を付けます。


(ア) 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発症前と同等にふるまえる。
(イ) 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽作業や座業はできる
(ウ) 歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
(エ) 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
(オ) 身の回りのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲が概ねベット周辺に限られるもの


一般状態区分は、(イ)又は(ウ)に該当する場合は3級相当、(エ)又は(ウ)に該当する場合には2級相当、(オ)が1級相当と判断されます。

「精神の障害による診断書」の「日常能力の判定」について

「精神の障害による障害年金」の場合、「日常生活能力の判定」は等級審査により強い影響を与えます。

そのため、他の障害の診断書よりも、「日常生活能力に関する医師の所見を記載する部分」が、より広範囲となっています。


「精神の障害による診断書」における「日常生活能力の判定」は、以下の7つの項目について以下の4段階で評価します。


1.適切な食事
2.身辺の清潔保持
3.金銭管理と買い物
4.通院と服薬
5.他人との意思伝達及び対人関係
6.身辺の安全保持及び危機対応
7.社会性



(4段階評価)
(1) できる
(2) 概ねできるが時には助言や指導が必要
(3) 助言や指導があればできる
(4) 助言や指導をしてもできない若しくは行わない


※(1)が1点、(4)が4点として7項目の合計を取り、それを7で割って平均点を出します。

精神の障害による障害の状態による等級は、この「日常生活能力の判定」における7項目の平均点と、「日常生活能力の程度」(1)~(5)のどの段階に区分されるかの組み合わせで決まります。


精神の障害による障害年金の場合、「日常生活能力の判定」は等級審査により強い影響を与えます。

「日常生活能力」の判定

「精神障害の診断書」や「病歴就労状況等申立書」に「日常生活能力」についてチェックする欄がありますが、「どう判断したらよいか分からない」「全部『自発的にできた』にチェックしてしまった」等のご相談を受けることがあります。

「日常生活能力の判定」は、以下のような点について、
単身でも可能かどうかを考えていただければと思います。

1つの質問に対する答えが、複数の項目に当てはまる事項も多くあります(例えば、「適切な食事」の「包丁やガスコンロの使用」が「身辺の安全保持」につながり、「弁当の購入」が「金銭管理と買い物」につながる)。

適切な食事(食事・炊事)

1.声かけや取り分けがなくても適時に適量をとることができるか
2.極端な偏食や過食がないか
3.社食等の利用や弁当の購入ができるか
4.包丁やガスコンロが使えるか
5.簡単な調理や配膳、片付けができるか
6.献立が立てられるか
7.自分で食べたいものを選ぶことができるか
8.健康を配慮して食べる量を調節できるか

身辺の清潔保持(トイレ、着替え、掃除、洗面、入浴)

1.便器等を汚さず使用できるか、汚した場合に後始末できるか
2.トイレットペーパーの使用量が適切か
3.季節やTPOを考えて衣服を選べるか
4.声をかけられなくても寒暖に合わせて着たり脱いだりできるか
5.衣服を前後逆に着用したり、襟元がだらしなかったり、裾が出ていたりすることはないか
6.自室の掃除や片づけができるか
7.ゴミの分別ができるか
8.入浴、洗面、歯磨き、髭剃り、整髪等が声かけなしでできるか
9.髭剃りでは力加減を調節して剃り残しなく行なえるか
10.身体の隅々まで洗えているか
11.洗髪などがきちんとできているか

金銭管理と買い物(買物)

1.お金の概念や流れ、仕組み、金額の大小や価値などの理解ができるか
2.ATMの利用ができるか
3.給与等の管理ができるか
4.食べたいものや欲しいものだけではなく、必要な品物を判断して買い物できるか
5.予算の範囲で計算しながら買い物できるか
6.小銭を使えるか

通院と服薬

1.通院の必要性の理解や判断、自発的な通院が可能か
2.医師に病状を説明できるか
3.医師の話を理解し守れるか
4.受付や問診票の記入が可能か
5.服薬の必要性の理解ができるか
6.服薬時間、服薬量の判断ができるか
7.飲み間違いの危険がないか

他人との意志伝達及び対人関係

1.自分の意思や要件を相手にわかるように伝えられるか
2.相手の話を聞き、理解できるか
3.相手への伝え方を工夫できるか
4.友人関係の構築、他人との距離感や相手の気持ちの理解、配慮ができるか
5.集団のルールを理解し、守れるか
6.場に合わない言動がないか

身辺の安全保持及び危機対応

1.乗り物を安全に利用できるか
2.周囲に注意を払いながら歩行できるか
3.火の始末、刃物の使用、戸締りなどが適切にできるか
4.通常と異なる事態への対応ができるか

社会性

1.社会生活に必要な事柄や基本的なルールの理解、手続き、行政機関や銀行等の利用ができるか
2.公共交通機関や公共の施設の利用ができるか、マナーが守れるか